3−4.形骸的関係絆群


  形骸的関係群は,「存在の全的受容・非代替性」が4群の中で最も低い値を示し,「社会的圧力・無力感」「永続性の観念・集団志向」「物質的依存・効率性」が全体平均を上回っており,中でも「永続性の観念・集団志向」「物質的依存・効率性」の得点が高い傾向のある群である。特徴として,配偶者に対して信頼や愛情は感じておらず,諦めや惰性の気持ちが勝っている。しかし,家族の分裂を避けたいと思っており,また結婚していることによって得られるメリットはあると感じているため,相手と一緒に過ごしたい気持ちではなく建前とメリットのために結婚生活を継続していると考えられる。相手に対する肯定的な評価はしていないが,メリットのために上手く関係を作っておく必要があるため,コミュニケーションは建前や仲の取り繕いが中心となるだろう。そのため家庭内ではお互いに気を使いながら行うコミュニケーションが中心となるだろう。

  この群ではアサーションのうち「アサーティブ」と笑いに対する意識のうち「声を出して笑う・心理社会的効果」が情緒的絆群よりも低く,社会的スキルとしての作り笑いのうち「感情制御」が非関与群よりも高い得点を示した。形骸的関係群は,建前でコミュニケーションを行うことが考えられるが,お互いを信頼し評価している夫婦を基盤とした凝集性の高い家族である情緒的絆群とは質の違うコミュニケーションなのであろう。そのため,声を出して笑うことはコミュニケーションを促進することや,思いやりが込められていると感じるものの情緒的絆群と比較すると低い値を示したのだろう。「アサーティブ」に関しても,相手のことを考慮して発言はするが,相手に気を使って発言しなければいけないという建前のコミュニケーションの中で習得されたものであることから情緒的絆群よりも低い値となったのではないだろうか。「感情制御」は,自分や相手にとってネガティブな感情を隠蔽・解消するために行う作り笑いスキルである。形骸的関係群において,建前でうまく取り繕うコミュニケーションが行われる家庭であると考えられることから,ネガティブな感情をもっていては取り繕うことが困難になることが考えられる。そのため家庭のコミュニケーションにおいて必須なスキルであることが考えられる。非関与群はお互いに無関心であることからネガティブな感情を解消することがそもそも必要ないのであろう。そのため非関与群よりも形骸的関係群において高い得点が見られたと考える。

  



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