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本研究の限界と今後の課題



 本研究では、継時的測定という研究の特性上、本研究では同一の被験者を特定するために出席番号を回答させて 調査を行った。しかし、高校生にとって定期テストは学業成績に関わる重要な役割を果たしているため、 不安に関する質問項目や教科の苦手意識に関する質問項目を、個人が特定される回答方式によって尋ねたことの 影響について考慮する必要があると考えられる。また、本研究ではテスト直前やテスト中の不安を扱うことができなかったため、 不安感のピークに達するとされる2時点の不安を扱うことで異なる結果が得られることも考えられる。

 さらに、本研究では、テスト不安が高い生徒は、テストを強く意識しており、学習方略をよく使用していることが 明らかになった。テスト不安が高いことによってテスト勉強から逃げたいという逃避方略に繋がるのではないかという 予想ができるが、それが結果として表れなかった。その理由として調査対象が進学校の生徒であったことが挙げられるだろう。 生徒のほとんどが大学進学を目指しているため、勉強は必要であるいう意識が働いており、逃避方略には結びつかなかった ことが考えられる。また、友達と勉強したり、勉強の悩みを相談する社会的方略をとると、テストが近づいてきてもテストに 対してポジティブな思考を持ち続けることが明らかになった。しかし、これは同じぐらいの学力の生徒が集まっており、 勉強について相談しやすい環境にある高等学校ならではの結果であるとも言える。そのため、より一般的なテスト不安と 学習方略の関係の研究にするならば、卒業後に就職する生徒が多い高等学校や、公立中学校など様々な校種で調査を行う必要があるだろう。

 本研究では、テストの結果に対する不安のみテスト得点に影響を及ぼしているという結果になり、テスト前の テストに対する不安と学業成績との関連はみられなかった。しかし、この結果は本研究の対象者だけでなく、 どの対象者にも当てはまるのかという点で疑問が残る。本研究で行った測定方法に問題がなかったのかというところも 議論する必要があるだろう。