本研究は、テスト不安をコントロールする要因について明らかにすることを目的としていた。
これまでの研究において、テスト不安を学習者が意図的にコントロールするための具体的な方法については
まだ明らかにされてきていなかった。そこで本研究では、学習者が選択・使用する学習方略、学習者が持つテスト観に着目し、
それらが、テストが近づくにつれて変化する不安にどのような影響を与えているのかについて検討することで不安をコントロール
するための具体的な方法を明らかにしようとした。そのために本研究において、高校生を対象にテストの役割や目的の認知や
学習方略がテスト不安や結果不安にどのように影響を与えているのかについて検討した。
本研究の結果から、テスト不安が高い生徒は、テストを強く意識しており、学習方略をよく使用していることが明らかになった。
しかし、選択・使用する学習方略や持っているテスト観によっては、テストに対して逃避的な思考や非適応的な対処などの
ネガティブな方向に向かってしまうことも示された。そのため、テスト不安を抱える生徒にとって、どのようなテスト観を持ち、
学習方略を選択・使用すると、テストに対してポジティブな思考を持ったままテストに臨むことができるのかが重要になる。
本研究の結果から、まず、テストを学習改善のためのものだと考えたり、学習を誘導するためのものだと考えるテスト観を持つと、
テスト3週間前にテストに対してポジティブな思考を持つことが明らかになった。鈴木(2011)は、テストの「改善」と
「誘導」の側面を強く認識するほど、適応的な学習方略を使用すると述べている。これらのテスト観を持っていると、
教科に合った学習方略を使用し、その結果、テストに対して不安を持ちにくくなるのではないかと考えられる。
高校生にとって大学進学が一般的になっている現在では、受験のための勉強だと考えることで、テストの本来の役割を
見失っていることも考えられる。また、定期テストの結果が順位として表れることで、普段から順位や成績を気にした
勉強になってしまう。テストの意義を理解し、定期テストは次の学習につなげるためのものだと認識することで、
不安を高めすぎることなくテストに臨むことができると考えられる。
次に、友達と勉強したり、勉強の悩みを相談する社会的方略をとると、テストが近づいてきてもテストに対して
ポジティブな思考を持ち続けることが明らかになった。岡田(2008)は、友人との学習活動時の援助提供は学習に対する
充実感を予測し、相互学習は友人関係に対する充実感と学習に対する充実感のどちらも予測していることを明らかにしている。
ここから、友人との学習活動が学習に対する肯定的な態度や感情に繋がっており、それが自信になっていることが考えられる。
テスト不安が高い人にとって、自分がしてきた勉強に自信を持つことによって不安をより高めることなくテストに臨むことが
できるのではないかと考えられる。現在、小学校や中学校では仲間とともに学ぶ協同学習などがとられているが、高等学校では
学習する内容が多いこともあり、ほとんどが一斉授業で進められている。したがって、周りと一緒に勉強する機会は少なくなるだろう。
授業中にできないからこそ、友達と勉強したり、勉強について話す機会を設けることで、テストが近づいてもポジティブな
思考を持ち続けることができるのではないだろうか。