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問題と目的



5.本研究の目的


 本研究では、高校1年生を対象に、学習者がテスト状況で実力を発揮しやすくするための、 テスト不安をコントロールする要因として、学習者自身が選択・使用する学習方略に着目し、テスト不安はどのような学習方略を持つと起こりにくくなるのか、 また不安の変化に影響を与えるのかという点をテスト不安の継時的変化とともに明らかにすることを目的とする。その際に、テスト不安を規定する要因として、 テスト観にも焦点を当てる。テスト不安は、個人の不安の感じやすさによっても異なる変化を示すと考えられるため、 個人の特性的な不安にも着目する。

 調査対象を高校1年生とする。そのようにしたのは、高校に入学し、数回の定期テストを経験する中で生徒が様々な学習方略の中から自分に合った方略を 探し出す時期であることが挙げられる。高校2年生に進級するときに文理選択があるが、文理選択をするうえで教科の得意・不得意を考えることが多いのではないかと 考えられる。その中でも数学の得意・不得意の意識は、大きな影響力を持つ要素の一つとして挙げられるだろう。 したがって、本研究では、数学のテストに限定し、数学という教科の苦手意識にも焦点を当てる。 また、学習者にとって定期テストは一回限りのものではないため、一度のテストに関わる不安だけでなく、 テストの結果を受けて次のテストに対する不安はどのように変化するのかという点にも注目し検討する。

 テストは自分の苦手なところを知るためのものだという「改善」のテスト観を持っている場合や、自分に合った学習方略を柔軟的に選択し、 丸暗記をするのではなく意味を考えながら学習する方法をとると不安は低くなると考えられる。また、テストのための勉強をしているという「強制」のテスト観を持つと、 そのテストを乗り越えるためだけに学習方略を使用するので、テストに対する不安は高くなると考えられる。これらの要因がどの時点のテスト不安に影響するのかを 複数回にわたる調査を通して検討する。