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問題と目的



4.テスト観


 鈴木・西村・孫(2015)は、学習動機づけの変化を規定する要因としてテスト観に着目し、研究を行っている。 その結果、テストを学習改善に活用するためのものとして認識することで、学習内容を習得しようという指向性が高まり、自律性を強く感じ、 結果として自律的な学習動機づけが高まるとしている。また、テスト自体を強制の場として捉えることは、 テストによって勉強をさせられていることを意識していることを表し、テストが学習者の自律性を阻害するものとして機能していると述べている。 このような結果から、鈴木ら(2015)は中学生の学習動機づけがどのように変化していくかは、定期テストの存在をどのように捉えるかによって左右されるとしている。 教育実践においては、テスト問題やフィードバックの方法を工夫し、テストの学習改善としての 側面を生徒が認識するように働きかけることが重要であるとしている。

 また鈴木(2011)は、テスト観を「テストの実施目的・役割に対する学習者の認識」と定義し、学習者の持つテスト観と学習の関係を接近‐回避傾向を媒介変数として研究した。 その結果、テストは自分の苦手なところを知るためのものだという「改善」や、テストは学習計画を立てるのに役立つものだという「誘導」の側面を強く認識するほど、 接近傾向の高さを媒介して、適応的な学習方略を使用することが示唆された。一方で、テストは優れている人物を選び出すためのものだという 「比較」の側面を強く認識するほど、接近傾向の低さと回避傾向の高さを媒介して、適応的な学習方略の使用が抑制される可能性が示されている。 また、テストのための勉強をしているという「強制」の側面を強く認識すると、テスト接近‐回避傾向を介さずに、学習方略の使用に影響を与えることが示唆されており、 学習者の持つテスト観によって学習方略の使用は異なることを示している。そこで本研究では、 学習者のテスト不安を規定する要因の1つとして、 テスト観にも着目することとする。