6.本研究の仮説
自律性援助は桜井(2003)でも示されているように,子ども自身が何かを始めることを励ます行動や態度を示す養育態度であり,子どもの動機づけにも関わる内容となっている。しかし,本研究で取り扱う就職活動への意識測定尺度では就職活動に関して「〜すべき」といった意識を測るような項目となっている。そのことからも,保護者の意識を測る際,保護者が子どもの就職活動に関して「〜すべき」といった認識を持っているのかを判断する要素となっているだろう。子どもの就職活動へ向かう気持ちを励ますだけではなく,「〜すべき」として子どものあるべき姿を望む保護者の気持ちは,自律性援助との間にマイナスの関連があるのではないかと考える。よって,本研究の仮説として「自律性援助と保護者の就職活動への意識の各下位尺度は負の相関を持つ。」ことを設定し,検討を行う。
また,これに関して,保護者の意識の大きさを子どもがどのように認識しているのかに関しても考慮する。河村(2003)においても,親の期待を高く認知している群が完全主義を高く形成する傾向が高いことが示されており,親からの期待や意識が影響を持つことが分かる。しかし,期待を重く感じる原因としても考えられる,自己の意識より保護者の意識の方が高い状態において,必ずしも良い自己が形成されるとは限らない。よって,本研究において,「就職活動への意識を,保護者の方が強く持っていると自律性援助が高くても自己受容の各下位尺度が低く形成されることがある。」も仮説として設定する。
最後に,大学生自身と保護者のどちらも就職活動への意識が前向きであり高く形成されている場合,低く形成されている場合よりも自己を認めることができているのではないかという考えより,「大学生自身と保護者のどちらも就職活動への意識が高いと他に比べて自己受容を高く形成している傾向がある。」に関しても仮説として設定し,検討を行う。
以上より,本研究では以下の3つの仮説をたて,分析を行うことを目的とする。
仮説1:自律性援助と保護者の就職活動への意識の各下位尺度は負の相関を持つ。
仮説2:就職活動への意識を,保護者の方が強く持っていると自律性援助が高くても自己受容の各下位尺度が低く形成されることがある。
仮説3:大学生自身と保護者のどちらも就職活動への意識が高いと他に比べて自己受容を高く形成している傾向がある。
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