1.はじめに


 われわれは,日々自分自身や他者を意識して生きている。それはすなわち自分自身の他者からどのように捉えられるのか,評価をされるのかを認識することにより,社会の中での自分自身の立場や位置づけを認識することができるためであり,社会と関わる上でそうした自分自身についての認識を持つことはわれわれにとって必要なことであるといえる。
 
 Duval & Wicklund(1972)による「自分自身に対して注意が向っている状態」と定義された“自己意識(self-awareness)”の概念が人間の社会的行動と関わっていることについて,これまで多くの研究が行われてきた。菅原(1986)は,公的自己意識が強い人は,自己顕示的な対人態度と消極的で内気な対人態度という2つの対立した対人態度を取る傾向があることから,“他者から賞賛され,好かれたい”という賞賛獲得欲求と“他者から嘲笑されたり,拒否されたくない”という拒否回避欲求の2つの異なった欲求があることを明らかにした。この2つの欲求に基づく2つの側面,すなわち他者から賞賛されたい場合と,拒否されたくない場合とで,対人的な場面での態度が変わってくるのである。
 
 このことは,他者の前で自分がどのように振る舞うのかについて考える上で大きな要因となり得る。つまり,社会心理学における自己呈示の領域と深く関わってくるところであるため,それぞれの個人の普段の自己呈示について考える上で,公的自己意識及び賞賛獲得欲求・拒否回避欲求という観点に着目することは重要な視点であるといえる。本研究ではそのような観点から,他者から賞賛されたい,拒否されたくないことは人々の第一印象に関わる被服行動における自己呈示にどのように影響しているのかについて考えていく。



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