3.賞賛獲得欲求・拒否回避欲求と大学生の被服行動について


 前述したように菅原(1986)は,“賞賛されたい欲求”と“拒否されたくない欲求”という2種類の欲求があることを示したが,小島・太田・菅原(2003)は,菅原(1986)の作成した賞賛されたい欲求・拒否されたくない欲求の尺度の信頼性と妥当性について再検討し,意識レベルでの願望や欲求の強さの他,欲求をもとにした戦略もしくは行動のとり方に焦点をあて,2つの欲求を“賞賛獲得欲求”“拒否回避欲求”として再構成し,それぞれの欲求について測定する尺度を作成した。

 本研究では大学生の被服行動を取り上げるが,大学生の日常の被服行動,すなわちどのような格好で大学に行くかという意思決定や服装の選択に,どのような要因が関わっているか検討する。その際,個人のパーソナリティ要因として,賞賛獲得欲求・拒否回避欲求の強さがどのように影響しているか検討する。

 ところで,大学生の被服行動は,高校までの制服着装行動と比べて,制服というユニフォームがない分,自由度が増し,被服行動が自己表現の手段として活用されている可能性は極めて高い。古結・松浦(2012)によれば,高校生の制服着装行動においても,「かっこよく・かわいく」着こなすことができる自分を見て欲しいという自己呈示的な動機によるものもあるが,他方で自分が周囲の生徒から浮いていないか,目立ちすぎていないかといった評価懸念意識が強く影響したものもあると考えられた。このことより,大学生における被服行動のなかにも同様の意識が含まれている可能性は高いと考えられる。大学生の被服行動と自己意識及び賞賛獲得欲求・拒否回避欲求との関連について検討する。



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