2-3.公的自己意識が強い人が持つ2つの対人欲求


 Fenigstein, Scheier, & Buss(1975)の自己意識尺度を用いて,さまざまな社会的行動と自己意識の関連が研究されてきた。その中でも公的自己意識について焦点を当てると,公的自己意識が強い人は他者からの評価的フィードバックに敏感である(Fenigstein,1979),その他にも化粧に対する関心が強い(菅原・岩男・松井,1985),また状況や雰囲気に合わせて着る服を演出する(Solomon & Schopler, 1982)などの研究により,公的自己意識が強い人は,対人場面で自己の行動をコントロールし,他者に与える印象を操作しようとする傾向が強いことが明らかにされてきた。  

 また,菅原(1984)は,公的自己意識の強さは自己顕示性とも対人恐怖的傾向とも有意な正の相関を持つとし,自己顕示的な対人態度と消極的で内気な対人態度という,対立的な2つの対人態度の存在を指摘している。菅原(1986)は,この2つの対人態度の裏に“賞賛されたい欲求”と“拒否されたくない欲求”という2種類の欲求があり,それぞれ異なった対人態度を媒介していることを明らかにした。これらの欲求のいずれかが働くのかによって呈示すべき自己イメージが異なることが指摘されている。具体的には,賞賛されたい欲求は“おしゃれ,ひょうきん,ゆかいな,おしゃべり”など積極的で自己顕示的なイメージが関連する一方で,拒否されたくない欲求については“人の好い,引っ込み思案,気が弱い”など消極的で善良なイメージと関連していることが示されている。
 

 このように公的自己意識は,自己を他者に対してどのように見せるかという自己呈示の側面と密接に関わっており,さらに他者からの評価に基づく自己の在り方にも関連がある。他者との関わりのなかでの自己の在り方を検討する場合に,大きな意味をもつ個人差要因といえる。



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