2-2.自己意識の強さについてのパーソナリティ


 上記の自己客体視理論は自己に意識や注意が向けられた「状態」の説明であったが,こうした自己意識についての理論から発展し,日常的な社会的行動と自己意識についての研究も多く行われてきた。すなわち,自己への意識についての特性やパーソナリティに関する検討である。  

 自己意識の在り方を特性として捉える場合,その在り方には個人差があると理解されるものであり,自己意識についての尺度が作成された。そのことで,より日常的な状況を想定した質問紙調査が可能になった。たとえば,Fenigstein, Scheier, & Buss(1975)は自己意識の強さの個人差を測定する尺度を構成した。自己意識の強さに関する質問項目を収集し因子分析を行った結果,自己意識に関わる2つの因子が抽出された。第1因子は,私的自己意識(private self-consciousness)と名付けられた因子であり,自己の内面や感情,気分など,他者からは直接観察されない自己の側面に注意を向ける程度に関する個人差を示すものであった。また,第2因子は,公的自己意識(public self-consiousness)と名付けられ,自己の服装や髪形,あるいは他者に対する言動など,他者が観察しうる自己の側面に注意を向ける程度に関する個人差を示すものであった。彼らはそれぞれの因子で負荷量の大きな項目を選び出し,私的自己意識尺度と公的自己意識尺度を構成し,さらに対人不安(sosial anxiety)尺度を加え,自己意識尺度(self-consciousness scale)として発表した。対人不安尺度とは因子分析の際に第3因子として抽出された項目に基づいて構成されたもので,対人状況において不安感や羞恥感を抱く程度に関する個人差を測定する尺度である。
 

 この中の公的自己意識と私的自己意識については,その後の多くの研究者によってさらなる研究がなされており,自己意識尺度は様々な研究のなかで個人差要因として使われている。自己意識に関する2つの側面として理解されやすいため,人間の社会的な行動に関する主たる自己の特性として取り入れられているのである。本研究においても,被服行動と自己との関わりという観点から,これらの自己意識について取り上げることとする。



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