1.はじめに
他者に対する好悪感情の研究は対人魅力の分野で多く研究されてきている。そのなかで,相手に対して抱く「嫌い」という否定的な感情に着目した研究は「好き」という肯定的な感情に着目しているものよりも圧倒的に少ない。「嫌い」という否定的感情もまた,人間関係を形成していく中で必然的に感じる感情であるため,「嫌い」という感情の構造を検討することは意義があると考えられる。しかしながら,その「嫌い」という感情に着目した研究の多くは,もともと嫌いな相手に対して持つ否定的感情について検討しており,好意を持っている相手に対する否定的感情について着目している研究はきわめて少ない。例えば「優しいところは好きだけど優柔不断なところは嫌い」といったように,家族や友人,そして恋人など好意を持つ他者に対して嫌に思うことはあるのではないだろうか。そのような問題意識をもとに,好意を持つ他者に対して抱く一部の否定的感情に焦点を当てて研究を行うこととする。
本研究では,2者間での感情に焦点を当てるため,一般に好意感情を抱く対象である恋愛対象者に対する否定的感情について検討し,さらにその否定的感情や出来事への対処行動について検討することとする。
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