1.はじめに
今日,社会で生きる全ての人が過ごしやすい環境をつくための配慮として,「合理的配慮」が注目されている。障がい者の権利に関する条約「第二条 定義」において,「合理的配慮」とは,「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている(文部科学省,2010)。また、2016年4月1日に施行された「障害者差別解消法」により学校などに合理的配慮をすることが義務付けられている。
文部科学省(2010)によると,小中学校などの教育現場での「合理的配慮」とは,教員,支援員等の確保,施設・設備の整備,個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮,などが挙げられる。LITALICOが発刊している『学校での「合理的配慮」ハンドブック』(2016)では、学校における「合理的配慮」の例が紹介されている。
例えば、
@読み書きが困難な子ども
タブレットや拡大教科書、音声読み上げソフトを使用する。
A集中が困難な子ども
テストの別室受験、担任や加配職員の近くの席の座る。
B指示が困難な子ども
指示を一つずつ出す、順番がわかるカードでの指示をする。
C移動が困難な子ども
スロープやエレベーターの設置、体育の内容を調整する。
などの配慮が考えられる。これらは一般的に「特別支援教育」と称されるものであり,近年,この特別支援教育の対象児童・生徒は増加傾向にある。
文部科学省(2012)は「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」の調査結果において,特別支援学校及び特別支援学級や通級による指導を受けている児童生徒は約2.7%,通常学級に在籍し,学習面又は行動面で著しい困難を示す児童は約6.5%と述べている。
特別な支援を必要とする子どもたちが増える中,その関わりの難しさから,教育・子育てに悩む支援者や保護者も少なくない。仲森・大谷(2016)は,発達障害をもつ子どもの保護者を対象に,育児困難や育児不安,抑うつ傾向について調査を行った。すると,6割以上の保護者が育児困難や育児不安,抑うつ傾向ともに感じていることが示された。育児不安の中には,子どもの将来への不安なども挙げられており,学校等で行われる教育的支援の重要性が窺われる。
このように,今日,特別支援教育には関心が高まっており,また,特別な支援を要する児童・生徒への対応をいかに考えていくのか,にも注目が集まっている。
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