考察


  本研究の目的は,「選択肢の数による選択中の魅力度」や「情報の有無による選択中の魅力度」について調査すること及び,「選択肢の数による選択所要時間」や「情報の有無による選択所要時間」について調査することであった。そのために,選択場面として質問紙上に印刷された写真から,最も好むものを一つ選ぶという状況を設定した。選択肢数は4個,8個,12個の3条件が設定されており,加えて情報の有無を操作した。したがって,実験デザインとしては「選択肢数(3水準)」×「情報有無(2水準)」=6条件を設定し,調査を進めた。

1.予備調査の結果について

1-1.予備調査における,「選択肢数」による「選択中の魅力度」の差
 予備調査については仮説は設定せずに,主に本調査での選択肢数を決定する判断材料として行った。加えて,仮説で述べた予測が予備調査においてもみられるかどうかを確認するために分析を行った。  まず,「選択肢数」の違いによる「選択中の魅力度」の差を見るために,「魅力度」を従属変数として「選択肢数」の違いによる1要因分散分析を行った(Table 7)。その結果,選択肢数による有意な差は見られなかった。したがって,今回の調査においては,選択肢の数が多くても少なくても,選択中の魅力度(嬉しさ,楽しさ)は変わらなかったことが示された。  しかし,各条件での「魅力度」の平均値を見ると,3個条件=4.00,4個条件=4.83,9個条件=5.64,12個条件=4.76となっており,選択肢数が3〜9個までは魅力度が増している。有意な差ではないが,仮説で予測した「選択肢数が多い方が,少ないときよりも選択中の魅力度が高い」という傾向は見られている。有意な差がでなかった理由の一つとして考えられるのは,標準偏差が大きいことである。つまり,実験参加者によって「魅力度」の感じ方にかなりバラつきがあったと考えられる。これは,調査時に実験参加者に対する統制を取り切れていなかった可能性を示している。また,実験参加者数があまり多くないことも関係しているのではないかと考えられる。実験参加者数がより多ければ,さらに信頼性の高い調査結果が得られたかもしれない。

1-2.「選択肢数」による「選択所要時間」の差
 「選択肢数」の違いによる「選択所要時間」の差を見るために,「選択所要時間」を従属変数として「選択肢数」の違いによる1要因分散分析を行った(Table 8)。しかし,選択所要時間において有意な差は見られなかった。したがって,今回の調査では,選択肢の数が多くても少なくても選択に要する時間に差はないことが示された。  また,4個条件において選択に要した時間が他の実験参加者よりも圧倒的に長かった実験参加者1名を除いて同じ分析をしたが,有意な差は見られなかった。

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