3.本研究の目的
ここまで述べてきたように,私たちが日常生活の中で選択行動をとる際の選択肢はとても多くなっている。色や形,性能なども含めれば,その選択肢は無限に増えていくだろう。今までは一般的に,何かを選ぶ際には選択肢は多い方が良いと考えられることが多かった。実際に,Iyenger & Lepper(2000)やバリーシュワルツ(2004)などでも,選択肢の多さは従来の一般信念の通り,選択行動に対する魅力度を高めることに効果的な面があることが述べられている。しかしその一方で,多すぎる選択肢は選択行動に対する動機づけや選択結果の満足度を低下させる可能性もあることが示唆されている。人々が何か選ぶときにも,選択肢の数が多すぎて選ぶのが面倒に感じたり,他の人の意見に頼ったりした経験が少なからずあるだろう。
そこで,本研究では,「選択肢の数」によって,選択中の「魅力度」と「選択に要する時間」がどのように変化するのかを検討することを第一の目的とする。
また,近年のインターネットの普及の影響により,選択肢の数とともに増加しているのが,「選択肢に関する情報の量」であると考えられる。先行研究でも情報数を操作した実験が多く見られる。しかし,情報の「有無」に着目しているものはあまり見られない。そこで「情報の有無」に着目して,選択中の「魅力度」と「選択に要する時間」にどのような違いがみられるのかを検討することを第二の目的とする。
つまり,実験のデザインとしては「選択肢数(3水準)」×「情報有無(2水準)」=6条件とした。
←back