21.自己効力感、楽観性、自己評価感情と学習意欲の関係


 21-1.ドリームマップ授業前後の変化による各尺度間の相関関係

  ドリームマップ授業によって変化した自己効力感、楽観性、自己評価感情と学習意欲の相関を見るために、post-preによる、授業前後の変化得点を算出し、関わりがないかを調べた(Table 16参照)。その結果、個人基準での肯定的な評価と楽観性・学習意欲の自ら学習に取り組む側面・進んで学習に参加する側面・授業に対する興味関心の側面、学習意欲の自ら学習に取り組む側面と進んで学習に参加する側面・授業に対する興味関心の側面、社会基準での否定的な評価と進んで学習に参加する側面に中程度の正の相関関係、自己効力感の行動に対する努力の側面と社会的な行動に対する評価・楽観性・学習意欲の自ら学習に取り組む側面、自己効力感の社会的な行動に対する評価と楽観性、楽観性と授業に対する興味関心の側面、社会基準での否定的な評価と学習意欲の自ら学習に取り組む側面、社会基準での肯定的な評価と進んで学習に参加する側面に弱い相関関係が見られた。

 このような結果が得られたことについて、子どもの中での一つの変化が、他の変化にも影響を与えているのではないか。キャリア教育ドリームマップ授業実施報告書(2015)より、自己肯定感や他者肯定、将来の展望などにおいて、授業前と授業後で比べ授業後の得点が高くなっていたが、この結果においても、自己肯定感が上昇することによって他者肯定感も共に上昇している事も考えられる。これは坂柳(2015)の結果より相関関係も見られた事から、同じように考えられる。

 また、重回帰分析を行い、ドリームマップ授業前後での変化のどの要因が学習意欲に影響を与えているかを検討した(Table 17参照)。結果、学習意欲の自ら学習に取り組む側面を自己効力感の行動に対する努力の側面、個人基準での肯定的な評価が説明し、進んで学習に参加する側面を個人基準での肯定的な評価、社会基準での肯定的な評価、社会基準での否定的な評価が説明し、授業に対する興味関心の側面を、個人基準での肯定的な評価が説明しているという結果を示した。

 このような結果が得られたことについて、学習意欲は自己評価が大きな影響を与えており、ドリームマップ授業によってその影響力が増したのではないかと考えられる。

 学習意欲の自ら学習に取り組む側面では、行動に対する努力の側面と個人基準での肯定的な評価によって説明できると考えられる。つまり、ドリームマップ授業による影響によって、自己効力感と個人基準での肯定的自己評価が変化し、それらが自ら進んで学習を行うという内容の学習意欲(真田ら,2014)の変化について説明している。このように説明できる理由として、「自分ならもっとできる」というような自分の意識の変化が、学習に対しての意識の変化を促したと考えられる。これは、小嶋・柴山(2006)の結果のように、自己効力感が高いことで、学習への興味関心が高まるという結果とも一致する。また、個人基準での肯定的な自己評価に変化が現れる事によって、「自分をよりよくしよう」という意志が働く事によって、自ら進んで学習を行うようになるではないかと考えられる。

 また、進んで学習に参加する側面では、個人基準での肯定的な評価、社会基準での肯定的な評価、社会基準での否定的な評価によって説明できると考えられる。「自分の意見を発表する」などの、授業に対しての積極的な関わりを測る下位尺度(真田ら,2014)である為、個人基準でも社会基準でも、肯定的な評価が変化することによって自身がついたり、反対に「もっとよくなろう」という心理が働いたりする事で、授業に対し、積極的に参加をしようという意識の変化をもたらしたと考えられる。

 さらに、授業に対する興味関心の側面では、個人基準での肯定的な評価によって説明できると考えられる。「授業は楽しい」などの、授業に対する興味や関心に関わる内容を測定するための下位尺度である(真田ら,2014)ことから、個人基準での自分に対する肯定的な評価が変化する事によって、改めて学習に対して興味を抱いたり、関心を持ったりする変化をもたらしたと考えられる。

 以上のことから、将来の夢の決定プロセスとしての役割を担うドリームマップ授業が、肯定的な自己評価を変化させている事が分かり、ドリームマップ授業によって学習意欲も変化するが、その変化に対して影響を与えている事がわかる。



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