20.群分けを含めたドリームマップ授業前後での比較検討
20-4.授業前後と活動志向理由の関連
ドリームマップの授業について、影響を受けた活動の理由がドリームマップ授業の前後の変化において効果があるかを検証した(Table 12参照)。その結果、授業前よりも授業後に、自己効力感の行動に対する努力の側面、社会的な行動に対する評価、楽観性、学習意欲の自ら学習に取り組む側面、進んで学習に参加する側面、授業に対する興味関心の側面、個人基準での肯定的な評価、社会基準での肯定的な評価に有意な主効果が見られた。また、理由小分類において、授業に対する興味関心の側面、社会基準での肯定的な評価に有意な主効果が見られた。
授業に対する興味関心の側面は〈活動〉、〈客観視〉、〈変化〉、〈共有〉が〈感情〉よりも得点が高く、社会基準での肯定的な評価は〈活動〉、〈客観視〉、〈変化〉、〈達成〉、〈共有〉が〈感情〉、〈変化可視〉よりも得点が高かった。〈感情〉のカテゴリーは、良かった、楽しかったなどの感情のみの理由記述になっていることから、他のカテゴリーよりも浅い考察になっているのではと考えられる。〈変化〉や〈客観視〉などは、授業を受けたことによって自分がどう感じたかを深く考察しているものが多い。ドリームマップ授業に対し、感想レベルの感じたままを書くだけの記述をしている児童より、ドリームマップ授業を受けたことで、何かしら自分が変わったと捉えている児童の方が、授業への興味関心が高くなる傾向にあるのではないかと考えられる。
また、〈変化可視〉はコップの水によって自分がどのくらい好きかが変化したことが目に見えることがよかったというような内容である為、深く捉えきれず、浅い考察に留まってしまっていることが伺える。つまり、目に見えた変化ではなく、自分自身の中での変化を感じた児童の方がより深く考察をしていることが伺える。その為、自分自身の中でしっかりと変化を感じている児童の方が、心に余裕があり、周りへと目を向ける傾向にあるのではないかと考えられ、このような結果になったのではないかと推測される。
また、大分類についても検証した(Table 13参照)。その結果、授業前よりも授業後に、自己効力感の行動に対する努力の側面、社会的な行動に対する評価、楽観性、学習意欲の自ら学習に取り組む側面、進んで学習に参加する側面、授業に対する興味関心の側面、個人基準での肯定的な評価、社会基準での肯定的な評価に有意な主効果が見られた。また、理由大分類において、授業に対する興味関心の側面、社会基準での否定的な評価に有意な主効果が見られた。授業に対する興味関心の側面と社会基準での否定的な評価は、【認知】が【感想】よりも得点が高かった。
【認知】のカテゴリーは、あらためて自分のことを知ったというような自己認知が促されたという記述のカテゴリーであり、【感想】は単に楽しかったなどのカテゴリーである。ドリームマップ授業に対し「楽しかった」という感想は得た学びが少ないか、なかったことになると考えられる。そういった児童は、日頃の授業からも得ている学びが少ない可能性があり、授業に対しても興味をあまり抱いていないと考えられる。また、ドリームマップ授業後に自分についての変化などを自覚している子どもの方が、日頃の授業でも興味を持って授業に臨んでいることが考えられる。その為、授業や学習の内容に対してより興味がある傾向にあるのではないかと考えられる。社会基準で否定的な評価をしている傾向が、【認知】の記述をした児童の方が【感想】の記述をした児童よりも高かったことについて、1回のドリームマップ授業で自分の変化など、ドリームマップ授業に対し深く考えることができると、自分の評価も客観的により認知している傾向が強いと考えられ、【感想】の記述をしている児童よりも深い考察ができるという事が、周りと比べた時の否定的な自己評価を高くしてしまう傾向にあると考えられる。
また、5・6年生についても分類し、検討した(Table 14,Table 15参照)。その結果、5年生において、授業前よりも授業後に、自己効力感の社会的な行動に対する評価、楽観性に有意な主効果が見られた。また、活動志向理由についても、授業に対する興味関心の側面に有意な主効果が見られた。また、6年生において、社会基準での肯定的な評価に有意な交互作用が見られた。単純主効果の検定を行ったところ、【感想】【共有】において、授業前よりも授業後の得点が高くなった。
6年生でこのような結果が得られたことについて、社会基準での自分に対する評価が変化したからだろう。【感想】は、「楽しかった」などの感情や「作成が楽しかった」などの内容が含まれる。ドリームマップ授業を受けることによって、無意識のうちに変化を起こしており、人よりもいい所があるという発見をしているのではないかと考えられる。また、【共有】は、「友達の夢を知る事ができてよかった」というようなニュアンスの内容が含まれており、友達の将来の夢を知ったことによって、自分の将来の夢の良さを再確認しているのではないかと考えられる。そういった考えを持つことによって、社会基準での肯定的な自己評価が高くなったのではないかと考えられる。
また、5年生で授業に対する興味関心の側面では、【認知】が【感想】【達成】よりも得点が高くなった。この結果について、自分の変化について考察ができる児童は、日頃の授業においても関心が高い傾向にあることが考えられる。【感想】や【達成】は、その授業で感じたことやうれしかったことなどの記述になっており、深い考察や学びの部分に触れられていない事が伺える。それに比べ、【認知】は自分がどう変わったかまで考えられている為、他の児童よりも考察が深くなっている。これはドリームマップ授業中にいきなりできる事ではないと考えられる為、日頃の授業から自然と行えているのではないかと推測され、そういったことができる児童は、授業に対しての興味関心が高い傾向にあるのではないかと考えられる。
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