1.集団全体の印象の
因子構造に及ぼす影響
集団としての印象を測定するSD法の形容詞対20項目は独自に設定したため,まず全体のデータで因子構造を調べるために因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。その結果,SMAPの集団としての印象として,『スケール特徴』『好感』『明るさ』の3因子,「ももクロ」の集団としての印象として,『フレッシュさ』『無邪気さ』の2因子が抽出された。
ところで,対人認知における基本的次元は,林(1978)は,「個人的親しみやすさ」「社会的望ましさ」「力本性(活動性)」であると指摘しており,人は対人認知の場面において基本的にこの3つの次元を用いて相手を認知していると明らかにしている。本研究においても,「SMAP」の3因子,「ももクロ」では2因子が抽出されたことに関して言えば,2〜3因子が抽出されたため,集団について認知するときも,3つ程度の次元を認知していると推察される。しかし,「個人的親しみやすさ」,「社会的望ましさ」,「力本性」といった3次元の軸にきれいに分かれるものではなく,やや異なる様相であると考える。本研究ではSMAPにおいても,「ももクロ」においても『明るさ』や『フレッシュさ』の印象が見いだされたことから,活動的であることや活発な印象,元気の良さなどが含まれる力本性の次元が本研究の結果に最も類似していると推察される。「社会的望ましさ」の次元については,本研究で扱った集団がエンターテイメントを提供するアイドルグループであるため,ほとんど見られない。「個人的親しみやすさ」については『好感』や身近さのイメージなどと近いと推察される。
また抽出された合計5因子に関連して,高井と岡野(2009)は,ジェンダー意識に関する検討の研究の結果として,男性女性ともに“男らしさ”として「包容力」「頼りがい」「たくましい・強い・タフ」「決断力」「優しい」「行動力」「体力・筋肉」「リーダーシップ」が上位にあがり,“女らしさ”として「優しい」「上品」「繊細」「家庭的」「かわいい」「愛嬌」「色気」「美しい」「控えめ」「男を立てる」「明るい」「あたたかい」「思いやり」があがったことを明らかにしている。また,Masculinity,Femininityに含まれる特性としては「頼りがい」「たくましい」「決断力」「行動力」「リーダーシップ」「意志が強い」,「上品」「かわいい」「愛嬌」「色気」「繊細」「従順」「おしゃれな」であり,これらの認識は月日を経てもあまり変化がない普遍的な捉え方であることも明らかにしている。
今回の結果では,SMAPに関しては,第1因子の『スケール特徴』は「特徴のある」「印象的な」「スケール感のある」,第2因子の『好感』は「可愛い」「快適な」「圧迫感のない」,第3因子の『明るさ』は「軽快な」「活発な」「暖かい」といった項目で構成されている。高井と岡野(2009)やMasculinity,Femininityにおいて“女らしさ”とされている「かわいい」の項目が,本研究では男性グループの印象『好感』として上位にあがってきている。
また,「ももクロ」においても,第1因子の『フレッシュさ』は「軽快な」「活発な」「親しみのある」,第2因子の『無邪気』は「大きい」「スケール感のある」「さわやかな」といった項目で構成されている。高井と岡野(2009)やMasculinity,Femininityにおいて“男らしさ”とされている「たくましい」「行動力」に似た項目が,本研究では女性グループの印象として上位にあがってきている。
これらのことから,対人魅力における“男らしさ”や“女らしさ”といった印象評価の次元が,これらのアイドルグループの印象評定においては,その観点からの評価をあまりしていない可能性があることが推察される。これは,今回選んだ2つのグループの特徴である可能性もあり,他のアイドルグループで同様の結果になるかどうかはわからないが,男性アイドルグループにおいての“男らしさ”や,女性アイドルグループにおける“女らしさ”といった性別に由来する魅力要因があまり機能していない可能性を示唆するものである。とくに,有名プロダクションに所属する若年層の男性アイドルグループ等においては,上記の“男らしさ”を前面に打ち出しているグループは少ないように感じる。
←back/next→