3.各教師の信念・過去の指導経験・教師間連携について


3−8.D教師について

 D教師は民間での社会人経験で得たものを踏まえた指導観をもって指導していると思われる。それがD教師の信念につながっていると考えられる。

 D教師はユーモアを取り入れ,生徒の関係づくりに活かしていると考えられる。ビリーフ得点も他教師に比べて最も低く,また他教師より,生徒への規律正しさの面での信念が低いと思われる。しかし,ビリーフ尺度項目の中で,「教師と生徒は親しい中にも毅然とした一線を持つべきである。」「学級崩壊や授業崩壊は教師の力量にかなり関係する。」と考えていることや,インタビューのなかで,「メリハリ」という言葉を強調していたことから,教師−生徒関係も意識しながら,指導していることが窺えた。

 D教師は「生徒指導担当」として,毅然とした態度での生徒指導を意識しているのではなく,ユーモアを交えた自然な関わりのなかで生徒指導を行うことで,生徒の問題行動への予防的関わりを行っていると示唆された。これも,ユーモアを取り入れた指導を意識したD教師の信念が影響していると考えられる。金子(2014)は教師の生徒に対する関わりは,生徒が問題を引き起こしたり,困っていたりする場面だけでなく,むしろ生徒が問題を引き起こしていない日常場面において,教師から生徒への関わりが重要であると述べており,生徒と日頃からコミュニケーションをとることが大事であることがわかった。D教師は生徒指導担当として効果的な指導を日常の中で行っていることが予想された。

  



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