第一節 事例検討の方法と目的について


 本研究では、神社に参拝する人と神様との関係において、現代の人が、日頃、神に何を期待しているのか、また神から何を得ていると認識しながら、神社とどのようにつきあっているのかということについて考察する。

 神(神社)とのつきあい方には、おそらく大きな個人差があると考えられる。最初に書いたように、目に見えない神の存在に対して、自身の未来を占うため、希望や願いをかなえるために神社を訪れ、心にしたためた願い事等を申し述べて帰ってくるだけの人がいる一方、日本の伝統的な季節の行事などを自宅や神社のなかで毎年忠実に実行している人もいるであろう。その人それぞれの信仰よって、どのような行動が見られるのか、探索的に検討を行う。今回は、日本の神社の中で特別な神社として崇敬を集めている伊勢神宮を取り上げることにする。

 今回、インタビューによって得られたデータは、巷の人々の実生活の中での信仰の在り方の事実を物語るものであり、筆者の論考の重要な補強材料となるものとして活用し、一部の人々のさまざまな信仰の在り方がドキュメンタリー的に「語られた」ものとして、まとめていきたい。インタビュー調査を行った五つの立場の人を事例として、考察していく。

 インタビュー対象者は以下のとおりで、それぞれの対象者の立場からの信仰の在り方について、事例として検討する。


 A:神道を学ぶ人(伊勢神宮で奉仕経験あり)
 B:伊勢神宮で働いている人
 C:伊勢神宮周辺のお店の人
 D:伊勢に住んでおり、伊勢神宮に定期的に参拝している人
 E:伊勢には住んでおらず、伊勢神宮に定期的に参拝している人
 F:伊勢神宮に参拝したことのある一般の人


 質問項目は、伊勢神宮に行くきっかけ、伊勢神宮に行く目的、伊勢神宮に行くときの心境、伊勢神宮に行った時の変化、他の信仰、についてである。



next