1.ほめについての概要
1-1.ほめの意義
ほめは日常的に行われる行為である。「ほめる」という言葉の辞書的な意味として,広辞苑では「物事を評価し,よしとしてその気持ちを表す。たたえる。称賛する」と記載されている。心理学的な定義としては,澤口・渋谷(2014)はほめるという行為を「他者の良い点を指摘・評価すること」としており,青木(2005a)は「ポジティブなフィードバック」,小玉(1996)は「ほめるという言語行為は,話し手が聞き手あるいは聞き手の家族やそれに類する者に関して“良い”と認める様々なものに対して,聞き手を心地よくさせることを前提に,明示的あるいは暗示的に,肯定的な評価を与える行為」と述べている。これらのことから,ほめは基本的にポジティブな印象を与えることが期待できる行為だといえる。また,熊取谷(1986)によると,ほめは「肯定的評価を行う評価行為としての機能や社会関係の創造あるいは保持という社会的潤滑油としての役割」を果たしていると述べられている。ほめはポジティブなフィードバックという特徴を持っているが,社会で生きていくうえで必要な対人関係を作り出し,またその関係性を保っていくために使われるのである。これらのことから,コミュニケーションにおいてほめは対人関係の維持や強化のためにも非常に効果的に用いられることが示唆される。
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