4. 共分散構造分析による検討
相互独立性−相互協調性と認知的評価が対人ストレスコーピングに与える影響を検討するため,相互独立性?相互協調性の各下位尺度と認知的評価の各下位尺度を独立変数,対人ストレスコーピングの各下位尺度を従属変数とし,共分散構造分析を行なった。仮説モデルをFigure1に示す。この仮説モデルで適合度を検討したところ,GFI=.716 AGFI=.589 CFI=.347 RMR=.116 RMSEA=.199となり適合度に問題があったため,修正指数に従ってモデルを修正したところ,GFI=.976 AGFI=.929 CFI=.995 RMR=.021 RMSEA=.024となり,十分な適合度を得たと判断し,このモデルを採用した。Figure2にこの修正モデルを示す。なお,相互独立性の下位尺度である「独断性」からはどの下位尺度とも関連が見られなかったため,本分析においては除外した。


「他者への親和−順応」と「評価懸念」との間に有意な正の相関が見られた(β=.52 p<.001)。また「個の認識−主張」と「他者への親和−順応」及び「個の認識−主張」と「評価懸念」との間に有意な負の相関が見られた(それぞれβ=-.31 p<.001,β=-.33 p<.001)。
また認知的評価の「脅威性」の誤差と「重要性」の誤差との間に有意な正の相関が見られた(β=.28 p<.01)。更に「ネガティブ関係コーピング」の誤差と「解決先送りコーピング」との誤差との間に有意な正の相関が見られた(β=.36 p<.001)。
それぞれの下位尺度間での影響を検討するため,パスに数値を付したものをFigure3に示す。

4-1.相互独立性?相互協調性から認知的評価への影響
「他者への親和?順応」から「重要性」,及び「評価懸念」から「脅威性」に有意な正の影響が見られた(それぞれβ=.41 p<.001)。また「個の認識−主張」から「対処効力感」に有意な正の影響がみられた(β=.50 p<.001)。
4-2.認知的評価から対人ストレスコーピングへの影響
「脅威性」から「ポジティブ関係コーピング」との間,及び「重要性」と「ネガティブ関係コーピング」,「重要性」と「解決先送りコーピング」それぞれの間に有意な負の影響が見られた(それぞれβ=-.12 p<.10,β=-.22 p<.01,β=.-21 p<.01)。更に,「重要性」から「ポジティブ関係コーピング」との間,「脅威性」から「ネガティブ関係コーピング」との間に有意な正の影響が見られた(それぞれβ=.19 p<.01,β=.23 p<.01)。
4-3.相互独立性?相互協調性から対人ストレスコーピングへの直接効果,認知的評価を介した対人ストレスコーピングへの間接影響及び,相互独立性?相互協調性から認知的評価を介した対人ストレスコーピングへの総合効果
「個の認識−主張」から「ポジティブ関係コーピング」,「他者への親和−順応」から「解決先送りコーピング」,「評価懸念」から「ポジティブ関係コーピング」それぞれの間に有意な正の影響が見られた(それぞれβ=.34 p<.001,β=.09 p<.001,β=.23 p<.01)。
また間接効果として「評価懸念」から「脅威性」を介して(β=.35 p<.001),「ポジティブ関係コーピング」に有意な負の影響が見られた(β=-.15 p<.10,間接効果β=-.05)。総合効果として「評価懸念」から「ポジティブ関係コーピング」に正の影響が見られた(総合効果β=.22)。
更に間接効果として「他者への親和?順応」から「重要性」を介して(β=.19 p<.05)「解決先送りコーピング」に有意な負の影響が見られた(β=-.25 p<.01,間接効果β=.04)。総合効果として「他者への親和?順応」から「解決先送りコーピング」へ正の影響が見られた(総合効果β=.26)。
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