7. 本研究の仮説




 石川(2017)によると,過去のとらえ方の「連続的なとらえ」「受容的態度」と精神的回復力の「新規性追求」の間に正の相関が見られ,精神的回復力の「肯定的な未来志向」と過去のとらえ方の「連続的なとらえ」「受容的態度」「わりきり態度」の間に正の相関,「否定的態度」「否定的認識」の間に負の相関があることを明らかにしている。そのため,「過去のとらえ方尺度の下位尺度「連続的なとらえ」「受容的態度」「わりきり態度」と社会人基礎力の各下位尺度は正の相関を持つ。」という仮説を設定し,検討を行う。

 また,野村(2016)は,日常的に特定の出来事について繰り返し想起して内省する傾向が高いと,自分のことについて語った後に,出来事に随伴する感情の強さが小さくなったり,意味づけが肯定的になったりすることを明らかにしている。そのため,自分自身の過去を想起する頻度が高いほど,過去に対して受容的であり,連続的なとらえができていると考えられる。よって,「過去を受容し,連続的なとらえができている人は,過去を想起する頻度が高く,過去を想起することが好きであるという特徴を持っている。」という仮説を設定し,検討を行う。

 さらに,石川(2014)は,青年期後期の過去のとらえ方タイプを見出しており,現在において過去を過去として受け止め,現在や未来につながるものとして位置づけることができている群は,将来への希望や将来目標を持つことができ,様々なことにチャレンジしていこうとする特性を持っていることを明らかにしている。将来への希望や目標があり,様々なことにチャレンジしていこうとする特性を持っているのであれば,現在における課題への取り組み方や,自分の力を最大限に活かしていこうという気持ちを強く持っていることが考えられる。そのため,「過去を受容し,連続的なとらえができている人は,社会人基礎力が高く,幸福追求が高い。」という仮説を設定し,検討を行う。逆に,過去に対して否定的な認識や態度を持っている群は,将来への希望を持ちにくいことも石川(2014)は明らかにしている。将来への希望が持ちにくいのであれば,現在においても課題への取り組みに積極性や主体性があまり強くないことや,自らの生活の心地よさを求める傾向があることが考えられる。そのため,「過去に対して否定的な態度・認識を強く持っている人は,社会人基礎力が低く,くつろぎ追求が高い。」という仮説を設定し,検討を行う。

 仮説1:過去のとらえ方尺度の下位尺度「連続的なとらえ」「受容的態度」「わりきり態度」と社会人基礎力の各下位尺度は正の相関を持つ。
 仮説2:過去を受容し,連続的なとらえができている人は,過去を想起する頻度が高く,過去を想起することが好きであるという特徴を持っている。
 仮説3:過去を受容し,連続的なとらえができている人は,社会人基礎力が高く,「幸福追求」が高い。
 仮説4:過去に対して否定的な態度・認識を強く持ち,過去をわりきれていない人は,社会人基礎力が低く,「くつろぎ追求」が高い。



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