6. クラスタ分析による検討


6−1.クラスタによる分類

 過去のとらえ方尺度の下位尺度である「連続的なとらえ」「否定的態度」「受容的態度」「わりきり態度」「否定的認識」の5つの下位尺度得点をもとに最遠隣法を用いてクラスタ分析を行ったところ,3つのクラスタが得られた。第1クラスタには72名(男性24名,女性48名),第2クラスタには41名(男性17名,女性24名),第3クラスタには12名(男性3名,女性9名)の被験者が含まれた。

 クラスタ分析で得られたこれらの3つのクラスタを独立変数,過去のとらえ方尺度の各下位尺度得点を従属変数とした一元配置分散分析を行った。その結果,過去のとらえ方の全下位尺度「連続的なとらえ」「否定的態度」「受容的態度」「わりきり態度」「否定的認識」において群間の得点差が有意であった(F(2,122)=17.78,72.07,20.03,7.62,65.93; ps<.001)ため,TukeyのHSD法による多重比較を行った。その結果,各クラスタは異なる過去のとらえ方の特徴を持っていた。各クラスタにおける過去のとらえ方尺度の5下位尺度の平均値(SD),多重比較結果をTable 9,Figure 1に示す。

 クラスタ1は,「わりきり態度」が3群の中で一番高かった。クラスタ2は,「連続的なとらえ」「受容的態度」が3群の中で一番高く,「否定的態度」「否定的認識」が3群の中で一番低かった。クラスタ3は,「否定的態度」「否定的認識」が3群の中で一番高く,「連続的なとらえ」「受容的態度」「わりきり態度」が3群の中で一番低くなっていた。

 これらの結果より,過去を過度にわりきり,過去に対して否定的な態度・認識を持ちながらも過去を受け入れているクラスタ1を「過去軽視群」と命名した。また,一番連続的なとらえができており,否定的な態度や認識もあまり持っておらず過去を受け入れているクラスタ2を「統合群」と命名した。さらに,連続的なとらえができておらず,過去に対して否定的な態度や認識を持っており,過去を受け入れることもわりきることもできていないクラスタ3を「とらわれ群」と命名した。

  





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