1.はじめに
スマートフォンとは,電話やメール以外の様々な機能が利用できる携帯電話端末であり,主にインターネットに直接接続でき,アプリケーションをインストール可能なものを指す。今では一人一台スマートフォンを所有していることが多く,我々は様々な場面でスマートフォンを利用している。主なスマートフォンの利用目的には,「メールや電話などの連絡手段」「メールを読む・書く」「ブログやウェブサイトを見る・書く」「ソーシャル・ネットワーク・サービス(以下,SNSとする)を見る・書く」「動画投稿・共有サイトを見る」などがある。SNS とはソーシャル・ネットワーク・サービス の略称であり,インターネット上に社会的ネットワークを構築するサービスで,コミュニケーションツールとして若者の間で多く利用されているものである。総務省が2016年に行った「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では,スマートフォンの利用時間の内訳として10代及び20代では「SNSを見る・書く」ことに充てる時間が最も長かった。また,モバイルマーケティングデータ研究所が2017年に行った「スマートフォン利用に関する実態調査」においても,10代20代が最も利用しているアプリケーションはSNSであるという結果が出ている。ここから,SNSは若者の間で特に多く利用されているものであって,重要視されていると言えるだろう。このように若者の間で特に利用が拡大されているSNSであるが,近年では SNS利用が心理的な健康状態に及ぼす影響についても研究が行われている。Seabrook,Kern & Rickard(2016)は,「SNS上でのポジティブな相互作用やソーシャルサポートは抑うつ状態や不安を軽減する一方で,ネガティブな相互作用や社会的比較は抑うつ状態や不安を高める」と述べている。
数あるSNSの中でも,TwitterやInstagramは,LINEなどのSNSとはその使い方が違っており,文字で「つぶやく」・写真や動画で「投稿する」といったことをできるのが大きな特徴である。また複数のSNSを利用している場合も多く,その利用方法や利用頻度も異なっているだろう。モバイルマーケティングデータ研究所(2017)が行ったSNS利用に関する調査を見ると,TwitterやInstagramは特に10代と20代の利用が多いことが分かる。TwitterやInstagramには,投稿に対してのコメントをしたり,いいねで反応するといった機能が充実している。そして,自身の投稿を見る人の多くは友人や知り合いであるため,人間関係の維持のために活用されることが多い。また10代と20代では,進学や就職といった,新しい環境による新たな人間関係が構築される場面が多く,SNSを使った他者とのコミュニケーションが重視されることが多い。TwitterやInstagramは,LINEなどで行われる一対一のメッセージのやり取りではなく,自分の情報を発信するという形での利用が中心であり,初対面の人や友人などに気軽に自分を知ってもらうためのツールとしても利用されている。このような理由から,10代20代の利用が多いのではないだろうか。
このようにSNSが多く利用されている中で,TVや新聞などでは,特に若者の間で起こっている「SNS疲れ」に関する特集がされることが多い。「SNS疲れ」とは,対人関係に悩んだり負担に感じたりして,投稿内容について「あのように書いてよかったのか」と悩むなど,SNS利用によってストレスを感じている状態を指す(総務省,2013)。「NHKクローズアップ現代“つながり孤独”若者の心を探って」では,半数以上がTwitterやInstagramの利用時に「SNS疲れ」を感じたことがあると述べられており,「SNSで友人の暮らしを見て劣等感を抱く」,といった若者の声が多くみられた。このように,SNS上で他者を意識することがSNS疲れに関係していると言えるだろう。インターネット上のSNSという媒体を通じて,いつでもどこでも誰かと繋がることができるがゆえに起こりうる現象が,SNS疲れであると考える。TV番組や新聞,インターネットサイトを見ると,SNS疲れの程度には個人差があり,SNS疲れを強く感じている人もいればそうでない人もいるということが伺える。NHK番組の「クローズアップ現代−“つながり孤独”若者の心を探って−」や,NEWSZEROの「“SNS疲れ”でも続ける−繋がりと安心感を求め−」などのSNS疲れに関する特集を見ると,SNS疲れを感じているという出演者の中には,「自分は人目を気にする性格だからSNS疲れをしやすい」と述べている者がいる。一方で,街角のインタビューでは,「自分はあまりSNS疲れを感じていない」と述べている者もいる。実際に,筆者の周りを見てもこのように述べている友人が多く,全員がSNS疲れを同程度感じているわけではないことが分かる。SNS疲れの程度には個人差があり,「SNS疲れの程度の差」はどこに起因するかと考えたときに,それは個人のパーソナリティーにあるのではないかと考えた。また,SNSを利用することによるストレスが幸福感に影響を与えるといったことも指摘されている。そこで本研究では,どのようなパーソナリティーを持ち合わせている人がSNS疲れを起こしやすいのか,またそれによって幸福感にどのような差がみられるのかについて検討する。
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