2.SNS
2-1.SNSの定義とその利用について
SNS とはソーシャル・ネットワーク・サービス の略称である。SNSはインターネット上に社会的ネットワークを構築するサービスであり,コミュニケーションツールとして若者の間で多く利用されている。河井(2012)は,SNSを「既存の社会的繋がりの維持や新たな社会的繋がりの構築を支えるためのオンラインサービス」と説明している。またSNS はコミュニケーションツールであり,他者からの評価や,社会からみた自分について強く意識する青年期の若者にとって,重要な役割を果たしていると言える。特に20代では97.7%がSNSを利用しており,若者の生活と切り離せないものになっていると言えるだろう。SNSには,LINE に代表されるような,会員同士がメッセージをやり取りできる「メッセージ系SNS」,Twitter やFacebook といった会員同士で情報交換や意見交換ができる「交流系SNS」,Instagram などの写真を投稿して会員同士がコミュニケーションを行う「写真系SNS」,Youtube などの動画を投稿して会員やユーザーがコミュニケーションを行う「動画系SNS」の4種類に分類される。
2-2.ネット依存傾向とSNSについて
ネット依存傾向については,情報通信白書(総務省,2014)では,「スマートフォンを利用したインターネット上でのコミュニケーションは日常生活の一部であり,特に青少年にとっては友人関係の構築・維持に不可欠なツールとなっている。また端末やソーシャルメディアの利用時間の増加に伴い,常にインターネットに触れていないと不安に感じるといった,ネット依存と呼ばれる課題やそれに伴う社会生活への影響も指摘されている」と述べられている。NHKクローズアップ現代の「“つながり孤独”若者の心を探って−」や,NEWSZEROの「“SNS疲れ”でも続ける−繋がりと安心感を求め−」などのSNS疲れに関する特集を見ると,SNSの利用が活発になっている現在では,「無意識のうちにSNSを開いて,友人の投稿や自分の投稿への反応があるかどうかを確認してしまう」といった,ネット依存の中でもSNSへの過度な没頭を思わせるような声が増えていることが分かる。特に若者の間では,SNSに対する意識や利用時間や大きく変化しており,連絡手段や調べものをすることよりも,SNSをチェックし他者と繋がることに時間を費やすことが多くなっていると言える。また総務省が2016年に行った調査では,スマートフォンを使用するメリットや目的として,「SNSでのコミュニケーションが取れるから」と答えた人が7割を超えていることからも,コミュニケーションの際にはSNSが多く利用され,その存在が重要視されていることが伺える。
2-3.SNS疲れについて
総務省(2014)の調査によると,SNSは若者の生活と密着していて,SNSでのコミュニケーションに悩んだり負担に感じたことがある者の割合は56.9%に上るとされており,多くの者がSNS利用にストレスを感じていることが報告されている。対人関係に悩んだり,負担に感じたりして,投稿内容について「あのように書いてよかったのか」などと悩む(総務省,2013)など,SNS 利用によってストレスを感じている状態を「SNS 疲れ」と言い,新聞などでも取り上げられている。SNS疲れとは,SNS 内でのコミュケーションによる気疲れのことである。具体的には,長時間の利用に伴う精神的・身体的疲労のほか,自身の発言に対する友人・知人の反応を過剰に気にしたり,友人・知人の発言に反応しなくてはならないという義務感を抱いたり,不特定多数の利用者からの否定的な発言などに気を病んだりすることを指す。また,SNSでは,他者の投稿を見るだけではなく,自分の考えや気持ちを言葉にして日記のように発信して,自己表現の場として利用されることが多い。自己表現をする際には他者からの反応や発言を意識するようになる。川浦・山下・川上(1999)は,インターネット上での日記は,他者との相互作用としての自己開示機能が,自分は読者に理解されているという満足感を媒介してその継続を促すと述べている。これらのことから,SNS 利用者はインターネット上で他者を意識しつつ自己表現をしていて,他者を意識することがコミュニケーションを活発にする一方で,意識しすぎるあまりストレスを感じ, SNS 疲れを引き起こしていると考えられる。
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