4.性差の検討


 本研究では,性別によってSNSの利用頻度や利用方法やSNS疲れの程度,また自己愛的脆弱性や過剰適応に違いがあることを考慮し,性差の検討も行った。

 まず,下位尺度の得点の性差を検討するためにt検定及び重回帰分析を行った(Table 10,Table 12,Table 13)。t検定では,自己愛的脆弱性尺度の下位尺度の「自分自身を励ます力の弱さ」に有意差が認められ,どちらも女性のほうが男性よりも得点が高かった。「自分自身を励ます力の弱さ」は,先行研究では「自己緩和不全」とよばれており,上地・宮下(2005)は,「強い不安や情動などを自分で調節・緩和する力が弱く,他者に調節・緩和してもらおうとする」といった特徴があると述べている。中嶋・岡本(2014)の研究でも同様に「自己緩和不全」に性差が有意であり,女性のほうが自己緩和不全が高かったことから,先行研究と同様の結果が得られたと言える。

 またSNSストレスイベント尺度の下位尺度の「繋がり欲求」については,t検定と重回帰分析の両方で有意差がみられ,得点を見ると女性のほうが男性よりも得点が高かった。「自己緩和不全」も「繋がり欲求」も,その得点が高いほど他者との関係を重視し,一人でいるよりも他者と関わろうという気持ちが強くなると考える。これらに関しては,曽我部・本村(2010)が,「女子は男子よりも人間関係における親密性を重視している」ということを指摘しており,SNS上においても,女性のほうが男性よりも親密的な関係を求め行動しているといった,先行研究と同様の結果が得られたと言える。



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