3.過剰適応と主観的幸福感及びSNS疲れとの関連
性別・青年期前期過剰適応尺度の下位尺度を独立変数に,受動的・能動的SNSストレスイベント尺度の下位尺度と主観的幸福感を従属変数にして重回帰分析を行った(Table 13)。青年期前期過剰適応尺度の「人からよく思われたい欲求」が他者との比較・本音の抑制・繋がり欲求・ネガティブ感情に5%水準の有意な正の影響を与えていた。周りの評価を気にして人からよく思われたいと思っている人は,他者に比べて自分がよく評価されないことに不安を抱くため,日常生活においても自分と他者を比較してしまうことが多くなるだろう。また,自分の本音をさらけ出すことで相手にどう思われるのかといったことを気にするために,言いたいことがあっても本音を隠そうとするだろう。本音があまり言えなくても,常に人と繋がってよく評価されていないと不安に感じるために,ストレスがかかるとわかっていながらもSNSをチェックする機会も多くなると考えられる。また,人からよく思われたい気持ちがある人は,他人の誹謗中傷の言葉やマイナスな発言はその真逆のことであるので,見ると気にしてしまうといったネガティブな感情も出るだろう。
「自己不全感」が主観的幸福感に1%水準の有意な負の影響を与えていた。自己不全感の項目としては「自分にはあまり良いところがない気がする」などがあり,自分に対する評価の低さや自信のなさが影響していると考えられる。自己評価が低いために自分に対する自信がなく,何をする場合にも人からの評価を気にしてしまうために,小さなことでも傷つきやすくなるとも考えられることから,主観的幸福感に負の影響を与えたと言えるだろう。また,注目獲得欲求・他者との比較にも5%水準の有意な正の影響を与えていた。これについては,自分にはよいところがないと思っていながら,人からはよく評価されたいと考えている気持ちの表れであると考える。自分がよく評価されているかどうかは他者と比べることで確認することになり,注目獲得欲求の「つぶやきや投稿に嘘を混ぜることがある」の項目のように,よい評価のために嘘を交えて話を盛ったりわざと注意を引き周りよりも注目されるような投稿をすることも考えられる。「自己抑制」が本音の抑制に5%水準の有意な正の影響を与えていたことについては,どちらも他者からどう思われているかを気にしてありのままの自分をさらけ出せなくなり,言葉としての本音も隠してしまうようになるからだと考える。以上のことから,青年期前期過剰適応尺度の下位尺度全てが主観的幸福感およびSNS疲れの程度に有意な影響を与えているわけではなかったが,「人からよく思われたい欲求」と「自己不全感」と「自己抑制」には有意な影響がみられた。よって,仮3は一部支持されたと言える。
←back/next→