2. 自己愛的脆弱性と主観的幸福感及びSNS疲れとの関連


 仮説2を検討するために,性別・自己愛的脆弱性尺度の下位尺度を独立変数に,受動的・能動的SNSストレスイベント尺度の下位尺度と主観的幸福感を従属変数にして重回帰分析を行った(Table 12)。自己愛的脆弱性尺度の「潜在的特権意識」が主観的幸福感に5%水準の有意な負の影響を与えていた。上地・宮下(2009)によると潜在的特権意識とは,自分への特別の配慮を求める傾向のことである。また稲垣(2007)は配慮の要求について,「他者に対して自分に特別な配慮を向けてくれることを要求し,周囲がその要求に応じないと不満を感じる傾向」であると述べている。潜在的特権意識の項目として「周りの人の態度を見ていて,こちらへの配慮が足りないと思うことがある」があるように,周囲よりも自分を優先している考え方であり,自分の感覚に合わない対応や反応をされた場合には不満に感じることが他の人に比べて多くなるだろう。このようなことから,潜在的特権意識は,自分に対する他者の振る舞いに対し不満を感じやすくなるために,主観的幸福感に負の影響を与えていると考える。

 「承認賞賛獲得欲求」が注目獲得欲求・他者との比較に1%水準の有意な正の影響を与えていた。上地・宮下(2004)は,自己愛的脆弱性の高い者は常に他者からの肯定を求めるために他者評価に非常に敏感で,他者の何気ない態度を否定的・無関心な態度と認識し傷ついてしまうと述べている。このことから,他者からの承認や賞賛を求める気持ちが強い人は,自分のつぶやきや投稿に対する反応を強く求めるとともに,他者と比べて充実し注目されるような内容を投稿したいと思うことから,このような結果が出たと考える。また繋がり欲求に5%水準の有意な正の影響を与えていることについては,他者からの承認や賞賛を求める人は,他の人に自分の投稿を見た上での反応や評価を求めていると考えられ,「早くいいねがほしい」といった,常に相手と繋がっていたいという思いがあることが理由として考えられるだろう。

 以上のことから,自己愛的脆弱性の下位尺度全てが主観的幸福感およびSNS疲れの程度に有意な影響を与えているわけではなかったが,「潜在的特権意識」と「承認賞賛獲得欲求」には有意な影響がみられた。よって,仮説2は一部支持されたと言える。



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