5.階層的重回帰分析による検討


 5−2. 期待の程度・対人葛藤方略スタイル・指導行動が教師からの期待の受け止め方に及ぼす影響

 期待の程度・対人葛藤方略スタイル・教師の指導行動及びそれらの交互作用が期待の受け止め方にどのように影響を及ぼしているのかを調べるため,期待の程度・対人葛藤方略スタイル・教師の指導行動及びそれらの交互作用項を独立変数,期待の受け止め方を従属変数として,階層的重回帰分析を行った。まず,第1ステップで期待の程度・対人葛藤方略スタイル・教師の指導行動を回帰式に強制投入法で投入した。続いて,第2ステップで期待の程度・対人葛藤方略スタイル・教師の指導行動の交互作用項をステップワイズ法で投入した階層的重回帰分析の結果をTable5に示す。第2ステップで,交互作用項を投入すると,すべての期待の受け止め方において有意となった。「積極的受け止め」,「負担的受け止め」,「失望回避的受け止め」であった。  

 「積極的受け止め」には,「期待の程度」「親近・受容」「統合スタイル」から有意な正の影響がみられた(順にβ=.246;p<.01,β=.351;p<.01,β=.179;p<.05)。「相互妥協スタイル」「適切な叱り×自己譲歩スタイル」「怖さ×不適切な権力の行使」から有意な負の影響がみられた(順にβ=−.286;p<.01,β=−.152;p<.01,β=−.139;p<.05)。
 「負担的受け止め」には,「期待の程度」「親近・受容」「期待の程度×怖さ」から有意な負の影響がみられた(順にβ=−.231;p<.01,β=−.178;p<.05,β=−.161;p<.05)。「自己譲歩スタイル」「相互妥協スタイル」「適切な叱り×自己譲歩スタイル」から有意な正の影響がみられた(順にβ=.176;p<.05,β=.278;p<.01,β=.230;p<.01)。
 「失望回避的受け止め」には,「親近・受容」「期待の程度×親近・平等」から有意な正の影響がみられた(順にβ=.335;p<.01,β=.192;p<.01)。「適切な叱り×統合スタイル」から有意な負の影響がみられた(β=−.155;p<.05)。

  



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