9. 本研究の目的




 期待は,やる気につながる場合もあれば,プレッシャーとなる場合もある。期待がどのように働くかは,生徒の受け止め方の問題であると考えられる。

 本研究では,教師の期待の程度,教師の指導行動,生徒の対人葛藤方略スタイルが教師からの期待の受け止め方に及ぼす影響を検討することを目的とする。親からの期待の場合は,自己決定意識が積極的受け止めに影響を及ぼすこと(渡部・濱口,2010),自己抑制型行動特性と負担的に受け止めることが関連していること(春日・宇都宮・サトウ,2014)が示唆されていることから,自己主張と他者尊重のバランスが重要であると考える。また,親の養育態度が期待の受け止め方に影響を及ぼすことが示唆されており(伊藤,2009),教師からの期待の場合は指導行動が関連していることが予想される。

 期待の受け止め方に影響を及ぼす要因を明らかにすることで,生徒によっては期待が負担に感じられる可能性があることを示唆できる。生徒の心理的負担を軽減する教師の働きかけも明らかにすることが期待できる点で臨床的意義があると考える。

 以上より,本研究では生徒が期待をどの程度感じているのか,教師の指導行動をどのように捉えているのか,どのような葛藤方略を用いやすいのか,の3つが教師からの期待の受け止め方にどのように影響を及ぼすのかについて検討することを目的とする。また,期待の程度,教師の指導行動,対人葛藤方略スタイルは相互に関係している可能性があるため,組み合わせた場合の教師からの期待の受け止め方との関連についても検討を行う。



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