5.自尊感情,セルフ・モニタリング,自己切替の関連について
岡田(2011)は,現代青年の友人関係が自尊感情に及ぼす影響について調べている。その中で,友人関係において気を遣うことは必ずしも否定的な意味合いだけでなく,自尊感情維持という肯定的な機能を持つと述べている。これより,大学生が友人関係の中で自分の行動が相手にどう見られているか気にしたり,相手によって自分の性格や行動を変化させたりすることは彼らの自尊感情に影響を与えていることが示唆される。また,八城(2010)は,周囲の期待や状況に応じて適切な方向に自己を変容させていこうとする傾向の強い人を,高セルフ・モニタリング者という意味で「高モニター」,周囲の期待や状況に影響されず,常に自分らしくあろうとする傾向の強い人を低セルフ・モニタリング者という意味で「低モニター」と呼び,それぞれが友人関係の中での振る舞い方に与える影響について検討している。その結果,高モニターが低モニターに比べ,相手の気持ちを気遣い,グループの雰囲気を気遣い,常にモニタリングしながら接している様子がうかがえた一方,低モニターは高モニターに比べ「関係不安」が高く,グループからどのようにみられているか,という不安を感じやすいことが明らかになったと述べている。これより,高モニターの人は友人関係の中で相手に気を配る傾向が高く,低モニターの人は自分の振る舞いが友人にどう見られているかを気にする傾向が高いことが考えられる。そして,このようなセルフ・モニタリングの高低による違いは,友人関係における自己切替の程度や質にも影響を与えているのではないかと考えられる。よって,自尊感情,セルフ・モニタリング,そして自己切替の概念はそれぞれに関連し合い,自尊感情はセルフ・モニタリングと自己切替の仕方にそれぞれ影響を与え,セルフ・モニタリングの高低もまた大学生が友人関係の中で日常的に行っている自己切替の仕方に影響を及ぼしているのではないかということが予想される。
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