4.セルフ・モニタリングについて


4−1.セルフ・モニタリングの概念

 人によって友人関係に関する様々な場面や状況での関わり方には違いが出てくる。この要因についてスナイダー(Snyder 1974,1979,1987)は,外に現れる行動(外面)と心の中にあるもの(内面)にはギャップがあり,それが人によって異なるからであると述べている。これに注目し,自己呈示や自己表出,また非言語的な感情表出などをコントロールする程度や能力には個人差があることを指摘してセルフ・モニタリング(self-monitoring)の概念を呈示している。スナイダー(Snyder 1974,1979,1987)はこれを「状況や他者の行動に基づいて自己の表出行動や自己呈示が社会的に適切なのかどうかを観察し自己の行動を統制すること」を定義し,社会的場面や対人的場面において自分の表出行動や自己呈示をモニターする能力をセルフ・モニタリングと述べている。  

4−2.セルフ・モニタリングと個人要因との関係

 大渕・堀毛(1996)は個人の社会的行動は外的な状況や対人場面における他者の反応などの外的な要因か,自己の内的状態・先有傾向・態度などの内的な要因,いずれかの情報に基づいて決定されると述べている。外的要因にもとづいて行動しやすい人は,自己の社会的行動の状況的適切さについての関心が高いために,社会的状況における自己呈示の仕方や他者の示す手がかりに敏感で,状況に応じて自己の状態をモニターしながら行動する傾向が強い。スナイダー(1998)は,このような人をセルフ・モニタリング傾向の高い人(HSM)と定義している。また,内的要因に基づいて行動しやすい人は,自己の社会的行動の状況的適切さよりも内的に一貫した行動を行うことに関心があり,自己の状態をモニターしながら行動する傾向が弱い。スナイダー(1998)はこのような人をセルフ・モニタリング傾向の低い人(LSM)と定義している。福島(1996)は,セルフ・モニタリングは自己呈示の調整能力の高低ともっとも関連の深い概念であるとしている。  

4−3.対人関係の中でのセルフ・モニタリング

 スナイダー(1998)は,高セルフ・モニタリングの人は,例えばテニスをする時はテニスが上手な友達とするなど,自分がする活動によって友達を分ける傾向にあると述べている。また,高セルフ・モニタリングの人は他のグループの人と一緒にいるところは見られたくないと考える傾向にあり,友人関係を広い地域にまたがって結ぶ傾向にあると述べている。一方低セルフ・モニタリングの人は,例えばテニスをする時は自分が好きな友人とするなど,同じ友人と色々な活動をする傾向にあると述べている。また,彼らは別々の分野の友人が混ざり合っても抵抗はない傾向があると述べている。このようにセルフ・モニタリングの概念は,我々が生活の中で対人関係を築き,多様な友人と関わる上で重要なものとなっている。  



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