3. 自尊感情について
3−1. 自尊感情の定義
Rosenberg (1965) は,自尊感情について「自己に対する肯定的または否定的な態度」と述べている。また,西田(2012)は,自尊感情は低すぎることで不登校など様々な問題を引き起こす要因になることが多いが,高すぎると人間関係においてトラブルを起こす原因もなるとしている。さらに小塩(1998)は,自尊感情の高い人は対人関係において不安緊張が低く,とらわれをもつことなく他者を受容しうると考えられると述べている。これより,大学生にとって一定の自尊感情を保つことは,対人関係の築き方に影響してくるのではないかと考えられる。
3−2. 状態自尊感情と特性自尊感情
阿部・今野(2007)は,自尊感情は他者からの評価や課題遂行結果に伴って変動するものとしてとらえることができると述べている。また,彼らはその上で近年自尊感情を状況との関連で捉えた研究が増加していると述べ,その上で自尊感情は状況によって変化する“状態自尊感情”(state self-esteem)と,比較的安定した“特性自尊感情”(trait self-esteem)の2つに分けて捉えることが可能であると考えられると述べている。そして,彼らは状態自尊感情について「現時点の自分に対して感じる全体的な評価であり,日常生活の出来事などに対応して変動するもの」と定義づけ,特性自尊感情を「時間や状況を通した自分に対して感じ全体的な評価であり,比較的安定しているもの」と定義づけている。
これより,自尊感情を状態自尊感情と特性自尊感情に分けて検討することが大切であると考えられる。
3−3. 自尊感情が友人関係に及ぼす影響について
谷(2015)はパーソナリティーと適応に関する研究の中で扱われる個人差変数としては自尊感情が最も多いとしている。よって,個人が持っている自尊感情の高低の違いは,対人関係の築き方において何らかの影響を与えていることが推察される。また,小塩(1998)は,友人関係の「広さ」と「浅さ」という異なる側面に触れ,「深い」友人関係を自己報告する青年ほど自尊感情が高いという結果が出たと報告している。彼はこれから見出された友人関係の「深さ」と自尊感情の関連は,青年期の親密な関係が心理的適応に影響を及ぼすことを意味していると考えている。これより,自尊感情の高低は大学生の友人関係の築き方にも影響を与えていると考えられる。
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