2. 特性自尊感情・状態自尊感情による調査対象者の群分け


 特性自尊感情・状態自尊感情において,各尺度ごとに平均値・中央値を算出した後,中央値を基準に調査対象者を「状態自尊感情高・特性自尊感情高群」「状態自尊感情高・特性自尊感情低群」「状態自尊感情低・特性自尊感情高群」「状態自尊感情低・特性自尊感情低群」の4群に分類した。以下に,この結果をもとにそれぞれの群ごとの調査対象者の発話的傾向を分析することとした。

2-1. 状態自尊感情高・特性自尊感情高群

 この群の対象者は,初対面のインタビュアーに対してしっかり顔を上げて笑顔で話す人が多い傾向にあった。「この人は大人しいから自分が話し役になるけど、この人はよく話すから聞き役になってる」など友人の行動や性格を把握しながら上手く関わろうとすることがわかる発話が多く見られた。これより、この群に位置する調査対象者は,自分と性格や考え方が違っても,自分も相手も大切にしてお互い心地よく過ごせるような心配りを自然と行っている人が多いのではないかと考えられる。

2-2. 状態自尊感情高・特性自尊感情低群

 上記の群の人よりは落ち着いた雰囲気を持っており,インタビュアーに対しても優しげな口調で接する人が多かった。「この人が明るいからそのテンションに自然と合わせてる感じ」などの発話が多く、自分より明るい性格を持つ人には自然と合わせることができると考えられる。

2-3. 状態自尊感情低・特性自尊感情高群

 この群の対象者はインタビュアーに対して緊張がはっきりと伝わる態度であったり,口調が淡白であるような印象を受ける傾向が強かった。また,自分の性格として「人見知り」と挙げる人もこの群には多かった。この結果より,この群の人は心を開いた人にははっきりした口調で話し,自分のことをさらけ出すことができるが,そうでない人には少し控えめな態度を取る傾向にある人が多いのではないかと考えられる。「この5人には全然気を遣わない。」「この人は自分をわかってくれているから、わがままな自分も出せる」などの発言が多く、安心して関われる人には素を出せるがそれ以外の人には控えめになる部分があると考えられる。 

2-4. 状態自尊感情低・特性自尊感情低群

 この群に位置する人は,全体としてインタビュアーと話す際にうつむき加減であったり感情の起伏が少なかったりと緊張ぎみである様子が伝わってきた。また,友人関係の中での悩みや愚痴をインタビュアーに話す人もおり,友人関係の中での悩みを他の群の人より強く感じ,またそれを他の友人にも日頃なかなか言うことができない部分もあるのではないかと推察された。また,自分の性格を尋ねた際,「マイナス思考」「ネガティブ」「人見知り」など,自分をあまり肯定的にとらえていないような言葉が出てくる人が多くいた。これより,この群に位置する人は日頃から自分にあまり自信を持っていないことが予想され、日頃から,自分自身のことであったり,友人関係のことに対して不安になったり,悩んだりしやすい一面がある傾向にあると推察される。

  



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