【考察】

 1.フローパーソナリティについて

 

 1-4.心理的well-beingについて   

 1-4-5.心理的well-beingとパーソナリティの関係について   

 NP者,S-AP者,K-AP者,KS-AP者の4つのパーソナリティと心理的well-beingの関係性を明らかにするために一要因分散分析を行った(Table20参照)。その結果,積極的な他者関係においてKS-AP者とK-AP者の間で有意な差が見られた。これより,KS-AP者はK-AP者に比べて積極的な他者関係を感じやすいということになる。有意差が見られなかった部分も含めると積極的な他者関係はK-AP者,NP者,S-AP者,KS-AP者の順で高くなる。つまり,K-AP者は身体的活動において価値を見出しやすいため,自分自身に注意が向き積極的な他者関係は低くなるが,KS-AP者やS-AP者は社交的活動に価値を見出しやすいため,他者と関わる機会が多く積極的な他者関係が高くなるといえる。  

 しかし,他の心理的well-beingの因子では有意差が見られなかった。ここで2つのことが考えられる。一つ目は,本当に他の因子においてはパーソナリティによる差がないという可能性である。しかし,身体的フロー頻度と社交的フロー頻度において差が見られたことを踏まえると,少なくともK-AP者とS-AP者においては差が見られてもよい。そのため,パーソナリティが実在すると仮定すれば差はみられるはずだろう。そして,二つ目はパーソナリティが実在するかどうかという点である。これについては,後に検討していくこととする。  

 次に,パーソナリティが実在すると仮定してパーソナリティと合致した活動を多くすると心理的well-beingが高まるかを調べるため,一要因分散分析を行った。ただし,本研究ではサンプル数の問題上,S-AP者において検討をした(Table21参照)。その結果,パーソナリティと合致しているかどうかは心理的well-beingに関係があるとは言えなかった。つまり,パーソナリティとwell-beingの関係性よりも行った活動種類とwell-beingの関係性の方が強いといえる。  

 そして,同じフロー経験の多さであれば,パーソナリティと合致したフロー経験が多いほど,心理的well-beingが高くなるかを調べるため共分散分析を行った(Table23参照)。その結果,いずれの因子においても有意差が見られなかった。これは,フロー経験においてパーソナリティと合致しているかどうかということは,心理的well-beingに関係があるとは言えないということを示している。これより,仮説5は支持されなかったといえる。  

 以上より,本研究ではフローパーソナリティと心理的well-beingに関係があるとは言えなかった。また,身体的フローよりも社交的フローの方がwell-beingに影響を与えている可能性は高いが,フローの多さはwell-beingに影響を与えていない可能性があるため,フローという状態よりも活動の種類自体に意味があるということが示唆された。



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