【考察】

 1.フローパーソナリティについて

 

 1-5.パーソナリティとフローについて  

 1-5-2.パーソナリティと経験の質の関連について  

 1-5-2-1.パーソナリティによる経験の質の差について  

 パーソナリティと経験の質の交互作用が有意であったため,パーソナリティの単純主効果の検定を行った。身体的活動での経験の質,社交的活動での経験の質,いずれにおいてもパーソナリティの単純主効果は有意であった。そこで4つパーソナリティで多重比較を行った。  

 まず,没入経験についてである。身体的活動での没入経験についてはS-AP者,NP者,KS-AP者,K-AP者の順で高くなり,S-AP者とK-AP者,KS-AP者の間で有意差が見られた。また,社交的活動での没入経験については,NP者,K-AP者,S-AP者,KS-AP者の順で得点が高くなった。そして,NP者とS-AP者,KS-AP者の間とK-AP者とS-AP者,KS-AP者の間で有意な差が見られた。つまり,パーソナリティと合致した活動で没入度が高くなると考えられる。また,KS-AP者においては身体的活動でも社交的活動でもフローを経験をしやすいとの仮定も支持されたといえる。これらの結果より,身体的活動でフローに入りやすいK-AP者,社交的活動でフローに入りやすいS-AP者,どちらの活動でもフローに入りやすいKS-AP者がいるということが明らかとなった。  

 次に自信経験についてである。身体的活動での自信経験についてはS-AP者,NP者,K-AP者,KS-AP者の順で得点が高くなった。そして,KS-AP者とNP者,S-AP者の間にのみ有意差が見られた。また,社交的活動での自信経験においては,NP者,K-AP者,S-AP者,KS-AP者の順で得点が高く,NP者とS-AP者,KS-AP者の間,K-AP者とS-AP者,KS-AP者間に有意差が見られた。つまり,没入経験と同様にパーソナリティと合致した活動で自信を経験しやすいということになる。  

 そして,挑戦経験についても得点の高さについては同様の結果が見られた。また,身体的活動での挑戦経験については,KS-AP者とNP者,K-AP者とS-AP者の間に有意差が見られ,社交的活動での挑戦経験についてはNP者とS-AP者,KS-AP者の間,S-AP者とK-AP者,KS-AP者の間に有意差が見られた。  

 以上より,身体的活動での経験はNP者とS-AP者よりもK-AP者とKS-AP者の質の方が高まりやすく,社交的活動での経験はNP者とK-AP者よりもS-AP者とKS-AP者の質の方が高まりやすい。NP者をどちらの活動にも入りやすいわけではないノーマル者と仮定すると,S-AP者はノーマル者に比べて社交的活動での経験の質は高いものの,身体的活動の質は低いことが示唆された。つまり,S-AP者が他のパーソナリティと比べて特に違いがあるといえる。



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