【考察】

 1.フローパーソナリティについて

 

 1-5.パーソナリティとフローについて  

 1-5-2.パーソナリティと経験の質の関連について  

 1-5-2-2.K経験とS経験の違いについて  

 次に経験の質の単純主効果の検定について考える。まず没入経験については,NP者,S-AP者,K-AP者において単純主効果が有意であり,NP者とK-AP者は身体的活動での没入経験が有意に高く,S-AP者は社交的活動での没入経験が有意に高かった。また,自信経験についても,同様の結果が得られた。そして,挑戦経験についてはNP者,K-AP者,KS-AP者について単純主効果が有意となり,身体的活動での挑戦経験が有意に高かった。  

 つまり,S-AP者は身体的な活動での経験よりも社交的な活動での経験の質の方が高くなり,K-AP者は社交的な活動での経験よりも身体的な活動での経験の質の方が高くなっている。これより,パーソナリティに合致した活動の方が経験の質が高くなるといえる。また,KS-AP者においては没入と自信で差が見られなかったのは,どちらの活動でも価値を見出しやすいからであると考えられる。そして,挑戦経験では身体的活動の質の方が高かったのは,社交的活動には深い精神集中を伴わないということが関係しているだろう(チクセントミハイ,2010)。つまり,社交的活動では深い集中が伴わない比較的低い挑戦水準の活動が多いが,身体的活動では深い精神集中が伴う挑戦水準が高めの活動が多いからであると考えられる。  

 以上より,パーソナリティに合致した活動での経験の質が高くなり,挑戦経験においては身体的活動での挑戦経験が高くなるといえる。しかし,この検討は近年主流となっている質問紙のみの検討しか行えていない。そのため,この質問紙で分類したパーソナリティと実際のフロー活動との検討も次項より行っていく。



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