【考察】
1.フローパーソナリティについて
1-5.パーソナリティとフローについて
1-5-3.フローパーソナリティと活動経験の質
フローパーソナリティ尺度と実際の活動の質との関係を明らかにするために,Pearsonの積率相関係数を算出した(Table29参照)。その結果,各所に正の相関を示したが,身体的フロー頻度と社交的フロー頻度にはどの経験とも相関が見られなかった。本来ならば,フロー頻度が高ければ実際の活動での挑戦,能力,集中度などと相関を示すはずである。そこで,活動を種類ごとに分類していないことが原因であると想定し,身体的活動の経験と社交的活動での経験に分け,身体的フロー頻度と社交的フロー頻度において,改めてPearsonの積率相関係数を算出した(Table30-31参照)。その結果,活動を種類ごとに分類をしても相関は見られなかった。また,活動経験の質について身体的フロー頻度と社交的フロー頻度の影響を調べるために重回帰分析を行ったが,そちらも有意な結果は見られなかった(Table32参照)。そのため,質問紙でのパーソナリティと実際の活動での経験において関係性をみることは難しい。つまり,質問紙とESM調査の整合性において問題がみられる。しかし,ESM調査は瞬間ごとのデータであり,活動の質に差があることが予想されるため,パーソナリティにおいて活動経験の質の差を検討することとする。
そこで,活動経験の質についてパーソナリティを要因に一要因分散分析を行った(Table33参照)。その結果,活動経験についても有意な差は見られなかった。これより,活動経験の質とパーソナリティには関係があると言えなかった。そのため,仮説8は支持されなかった。つまり,パーソナリティに関係なく,その瞬間に行っている活動により経験の質は異なるといえる。
では,パーソナリティは活動と全く関係がないのだろうか。パーソナリティが,ある活動を行いやすくしている可能性もある。そのため,どちらの活動を多く行っているかを調べるため,身体的活動の比率についてパーソナリティを要因に一要因分散分析を行った(Table34参照)。その結果,活動種類の比率においてパーソナリティによる有意な差は見られなかった。また,ESM調査で得た各活動とパーソナリティが合致しているかを調べるためにカイ二乗検定を行った(Table35参照)。その結果,どの活動回でもパーソナリティとの関係性は見られなかった。これより,パーソナリティと実際に行う活動との関係性は見られないことが示された。つまり,あるパーソナリティが特定の活動を行わせているわけではなく,個人が置かれた状況や環境,気分によって活動の選択が行われている可能性が示唆された。これより,仮説1は支持されなかったといえる。
そして,パーソナリティが特定のフローの型に入りやすくしている可能性も考え,パーソナリティとESM調査で得た各活動回のフローパターンでカイ二乗検定を行った(Table36参照)。その結果,パーソナリティとフローの種類に関係性は見られなかった。つまり,活動の選択と同様にパーソナリティが特定のフローに入りやすくしているわけではない。従って,個人が置かれた状況や環境によって活動の種類が決まり,その活動に対する個人の能力や挑戦度合いによりフローの種類も選ばれていることが示唆された。
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