【考察】
2.挑戦レベルと能力レベルの与える影響について
2-1.身体的活動と社交的活動でのフロー没入度の差異
社交は,一般的に非常にポジティブな経験だが,めったに深い精神集中を伴わない(チクセントミハイ,2010)。そのため,社交的活動は身体的活動よりも容易に行うことができ,フロー没入度が比較的に低いことが予想される。そのことを明らかにするために,身体的活動と社交的活動において,挑戦水準と能力水準での散布図を示した(Figure9-10参照)。その結果,どちらの散布図も無相関となり,活動種におけるフロー没入度に違いは見られなかった。つまり,どちらの活動種でも「低い挑戦―低い能力」から「高い挑戦―高い能力」までの活動が行われているということである。これより,仮説3は支持されなかった。
そして,社交的活動においても深い精神集中を伴っている可能性も示唆された。社交的活動の中には,テレビやインターネットの視聴など挑戦・能力ともに低い受動的レジャーもあった。一方で,アルバイトや勉強会といった高い挑戦と能力を必要とする活動があった。これより,ある場面によっては社交的活動もフローに入りやすいといえる。つまり,身体的フローの方がより深いフローへと入りやすいという予想は棄却され,フローの深さは活動種に関わらず,その活動の質に強く影響を受けているといえる。
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