【問題と目的】
1.フローについての概要
1-1.フローの定義
Csikszentmihalyi (1975)は,フローを“全人的に行為に没入している時の包括的感覚”と定義しており,フローは楽しさを伴う体験だと述べている。また,Csikszentmihalyi (1990)は,フローとは最適経験の一つであると述べている。最適経験とは,意識の中に入り続ける情報が目標と一致し,周囲に対する心配が減るため,多くの注意が活動を行う自分へと向けられることにより,目標達成にのみ意識が向けられる状態のことである(Csikszentmihalyi,1990)。その中でも,被検者が「流れているような感じだった」「私は流れに運ばれている」と報告をした最高の状態をフローと呼んだCsikszentmihalyi(1975,1990)。
フロー状態の活動について,Csikszentmihalyi (1975)は,自己目的的な活動であると述べている。自己目的的活動とは,その活動を行うこと自体が楽しい経験であり,自分自身の報酬になるような活動である。活動を行う際に,人は何かに動機づけられ行動をする。報酬や利益を得るためや処罰を避けるため,といった外発的な要因によって動機づけられる外発的動機づけと,自分自身の興味や関心,活動を行うこと自体に価値を見出すといった内発的な要因によって動機づけられる内発的動機づけがある。鹿毛(1994)によると,Young (1961)が内発的動機づけと外発的動機づけの区別をし,外発的動機づけでは外的な要因が必要となるのに対し,内発的動機づけは活動それ自体に価値を見出し,行動が自己指支持的であると述べている。これらのことより,フロー状態の活動である自己目的的な活動は内発的に動機づけられた活動であるといえる。つまり,鹿毛(1994)が指摘する通り,内発的動機づけとフローは密接に関係しているといえる。
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