考察
2.仮説(5) 個人的ノスタルジア感情を喚起させる要因
「港」と「人工比較に使われた砂浜」の写真において居住地の近くに同じ種類(港/砂浜)の海がある者はない者と比べて個人的ノスタルジア得点が高まり,居住地の近くにある海と同じ種類の海で個人的ノスタルジアが喚起されるという仮説(5)は一部支持された。
居住地の近くに海がある人は,海での経験や風景を記憶しており,近くの海と同じ形態の海の写真を見ることでその記憶を思い出し,個人的ノスタルジアが喚起されたのではないかと考えられる。砂浜付近に住む人は「人工比較に使われた砂浜」のみで個人的ノスタルジアが高まるという結果が得られたことについて,居住地の近くの海により似ている海であったのではないかと考える。
本研究で扱った海の砂浜の色は白に近い砂浜や黒に近い砂浜など様々であり,「人工比較に使われた砂浜」は比較的茶色の強い砂浜であった。したがって、居住地の近くの見慣れた海が茶色の砂浜であったことが予想される。また,構図について着目すると比較的近景で広い砂浜が写されている。近景では砂浜で遊んだり考え事をしたりする過去の自分自身の姿を想像しやすく,個人的ノスタルジアの喚起が高まったのではないかと憶測される。しかし,本研究の仮説の範囲を超えるものであるため,あくまでも一つの可能性である。「磯」については,サンプル数の少なさから明確な結論を得ることができなかった。
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