本研究の問題と今後の課題
本研究は, 最も後悔した出来事についての意味づけ過程に着目し, 検討を進めた. 回想法を用いて調査を行ったため, 当時の事について正確に回想仕切れていない可能性がある. また, 質問フォームにおいて, 外傷後成長について尋ね, その後でこのような変化(外傷後成長)が生じる直前にどのように考えていましたかと質問することで, 後悔した直後の混乱している時点でもなく, 既に後悔に対する悩みが解消した現在でもない, 落ち着いて後悔と向き合っている時点の熟考について質問を行った. しかし, 既に後悔が低減している者にとっては, 外傷後成長を遂げる前に後悔に対してどの程度の頻度で向き合っていたかを回想することが困難であったことや, 後悔を感じてから意味づけを行うまでの期間が短かった者にとっては, 後悔直後の熟考と外傷後成長前の熟考が同じ時点をさしてしまっており, 同じ質問をしてしまっていたことが予想される. 外傷後成長の意図的熟考と侵入的熟考の両方が平均値より低い群における後悔から気付いたこと等の記述の内容は, 既に大きな後悔が低減され現在においてはその出来事について深く考えていない者や, そもそも人生で最も後悔した事の衝撃が弱いがために, その出来事について深く考えていない者が混在しているという印象を受けた. これらの問題は, 縦断的な研究デザインで, 回答した時点で感じている後悔について時間を追って調査することで解決されるだろう.
また, 回答者の平均年齢が20代前半であり, 回答者が学生などに偏ってしまったことが考えられる. 中年期などの行為後悔と非行為後悔の意味づけ過程の違いや, 後悔から得た気づきについて検討することで, 中年期の者が後悔を低減させる方法や, 後悔から気づきを得る方法を明らかにする必要もあるだろう.
また, 後悔から得た気付きにバリエーションが見られたため, この点についてより詳しく検討する必要がある. 類似する概念がほとんどなかったような気付きについても検討することで, 後悔を感じたことによる変化について明らかにすることが出来るだろう.
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