結果


 回収したデータのうち, 回答に不備のあったものを除き, 質問フォームAは150名, 質問フォームBは136名を分析対象とした. 回答者の平均年齢は質問フォームAは21.04歳(SD=3.76), 質問フォームBは20.82歳(SD=33.56)であった. 分析にはAmos18.0, HAD16_102(清水,2016), IBM SPSS Statistics ver.25を用いた.

1.因子分析と尺度構成の検討(質問フォームA)


 分析に用いる項目数が多く, モデルが大きくなり推定が不安定になりやすい(星野・岡田・前田, 2005)ため, 一因子あたり4項目以上となった場合にはアイテムパーセリングを行った. パーセリングは「小包化」とも呼ばれ(清水, 2005), 2つ以上の項目の合計得点または平均得点を観測変数として利用する方法である(Bandalos, 2002). モデルサイズの減少による推定の安定, 推定値の希薄化の防止, 分布が正規分布に近づくなどの利点がある(Bandalos & Finny, 2001; Hagtvet & Nasser, 2004).

1.1. 反応スタイル尺度


 島津(2010)が作成した項目のうち, 気そらしにかかわる二因子を使用した. それぞれ3項目ずつ用いた. 「気分転換的気そらし」「回避的気そらし」それぞれについて平均値と標準偏差を求めた結果, どの項目にも天井効果・床効果は見られなかったため, そのまま分析に用いた. 6項目について2因子構造・斜交を仮定し確認的因子分析を行ったところ, 当てはまりのよい結果が得られた(χ2(8)=23.286, p=.003, GFI=.954, AGFI=.878, CFI=.949, RMR=.155, RMSEA=.111). 因子負荷量をTable 1に示す. 各因子三項目ずつであるため, パーセリングは行わずに分析に用いることとした. そして, Cronbachの信頼性係数をそれぞれ算出したところ「気分転換的気そらし」でα=.671, 「回避的気そらし」でα=.803となり, 概ね十分な信頼性が得られた.



1.2. 後悔直後の熟考(日本語版出来事に関連した反すう尺度)


 Taku, et al. (2015)の「日本語版―出来事に関連した反すう尺度」の2因子を使用した. それぞれの下位尺度から5項目ずつ用いた. 「意図的熟考」「侵入的熟考」それぞれについて平均値と標準偏差を求めた結果, どの項目にも天井効果・床効果は見られなかったため, そのまま分析に用いた. 10項目について2因子構造・斜交を仮定し確認的因子分析を行ったところ, 当てはまりのよい結果が得られた(χ2(34)=35.309, p=.406, GFI=.959, AGFI=.934, CFI=.998, RMR=.074, RMSEA=.016). そして, 因子負荷量が近い項目でパーセリングし, パーセリングした項目の平均値を求めた(Table 2,3). パーセリングした項目で構成された下位尺度のCronbachの信頼性係数をそれぞれ算出したところ, 「意図的熟考」でα=.874, 「侵入的熟考」でα=.717となり十分な信頼性が得られた.





1.3. 外傷後成長前の熟考(日本語版出来事に関連した反すう尺度)


 Taku, et al.(2015)が作成した日本語版尺度の2因子を使用した. それぞれの下位尺度から5項目ずつ用いた. 「意図的熟考」「侵入的熟考」それぞれについて平均値と標準偏差を求めた結果, どの項目にも天井効果・床効果は見られなかったため, そのまま分析に用いた. 10項目について2因子構造・斜交を仮定し確認的因子分析を行い, 修正指数に従って修正したところ, 当てはまりのよい結果が得られた(χ2(33)=54.349, p=.011, GFI=.934, AGFI=.889, CFI=.981, RMR=.072, RMSEA=.065). そして, 因子負荷量が近い項目でパーセリングし, パーセリングした項目の平均値を求めた. (Table4, 5).パーセリングした項目で構成された下位尺度のCronbachの信頼性係数をそれぞれ算出したところ, 「外傷後成長前の意図的熟考」でα=.855, 「外傷後成長前の侵入的熟考」でα=.943となり, 十分な信頼性が得られた.





1.4. 短縮版外傷後成長尺度


 Cann, et al. (2010)が作成した5因子10項目を使用した(邦訳は「日本語版-外傷後成長尺度」(Taku, et al., 2007)を参照した). 「他者との関係」, 「新たな可能性」, 「人間としての強さ」, 「精神性的(スピリチュアルな)変容」, 「人生に対する感謝」それぞれについて平均値と標準偏差を求めた結果, 「他者との関係」の1項目(人間が, いかにすばらしいものであるかについて, 多くを学んだ. ), 「人間としての強さ」の1項目(思っていた以上に, 自分は強い人間であるということを発見した. ), 「精神性的(スピリチュアルな)変容」の2項目(精神性(魂)や, 神秘的な事柄についての理解が深まった. 宗教的信念が, より強くなった. ), 「人生に対する感謝」の1項目(自分の命の大切さを痛感した. )の計5項目において床効果が見られたため, この5項目を削除した. 残りの5項目について1因子構造を仮定し確認的因子分析を行ったところ, 概ね当てはまりのよい結果が得られた (χ2(5)=14.553, p=.012, GFI=.965, AGFI=.895, CFI=.944, RMR=.097, RMSEA=.111). そして, 因子負荷量が近い項目でパーセリングし, パーセリングした項目の平均値を求めた(Table6, 7). パーセリングした項目で構成された下位尺度のCronbachの信頼性係数を算出したところ, 「外傷後成長」はα=.722となり十分な信頼性が得られた.



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