方法

 本研究では後悔直後の気そらし, 反すうと, 外傷後成長前の反すうが外傷後成長に与える影響を明らかにする. そして, 外傷後成長に影響を及ぼしていた気そらしや反すうが後悔の低減にも関わっているかどうかを検討する.

1.調査対象


 18歳以上の方を対象に, 非行為後悔についての質問フォームと, 行為後悔についての質問フォーム両方に回答するように求めた. 非行為後悔についての質問フォームでは207名, 行為後悔についての質問フォームでは160名を対象に調査を行った. 有効回答数は, それぞれ156, 130であった.

2.調査時期


 2019年12月上旬〜中旬

3.手続き


 インターネットを利用した調査法を用いた. 質問フォーム回答の依頼書を三重大学内の講義の場で配布・またはメールで送信し, 調査協力を依頼した. 調査は, Googleフォームを用いて行った. QRコードまたはURLから質問フォームを開いて回答して貰った.

4. 倫理的配慮


 本研究は,三重大学教育学部研究倫理審査委員会の承認を受けたうえで実施した(No. 2019−9). 調査実施の際に,研究の主旨と概要を説明した. また, 倫理説明のシートを配布・送信し,参加を強要することのないように配慮した. 得られたデータは統計的に処理されるため個人が特定されることはないこと,参加者の意思で回答の拒否・中止はいつでもできることを明示し,研究参加者の安全性の確保および意思を尊重できるようにした.

5.質問紙の構成


 質問紙は以下の尺度によって構成した.

 5.1.フェイスシート


 倫理説明項目への同意, 年齢, 性別を尋ねた.

 5.2.最も後悔した出来事について


 質問フォームAでは人生において最も後悔した非行為後悔についての記述を求めた. 質問フォームBでは人生において最も後悔した行為後悔についての記述を求めた. 現在は後悔していない出来事でも構わないが, 回答者に精神的な負担をかけ過ぎないために, 一年以上前の出来事で, 記述可能な出来事のみを回答するように指示した. これは, 上條・湯川(2016)が, “過去のストレスフルな体験”について詳細な回答を求める際に, (a)“現在から1年以上前に起きた出来事”, (b)“解決していると思っている出来事, または, 未解決だが調査で回答可能な出来事”という条件を提示して記述させていることを参考にした指示である.
 次に, 後悔を感じ始めたから現在までの経過期間を, 【 】年【 】ヶ月の形式で, 後悔を感じ始めた当時の後悔の強さを「0:全く後悔していなかった」〜「6:非常に後悔していた」の7件法で回答を求めた.

 5.3. 反応スタイル尺度


 島津(2010)が作成した反応スタイル尺度を使用した. 尺度は, 「否定的考え込み反応」, 「回避的気そらし反応」, 「問題解決的考え込み反応」, 「気分転換的気そらし反応」の4つの下位尺度からなっているが, 本研究では気そらし反応を測定するために, 第2因子「回避的気そらし反応」と第4因子「気分転換的気そらし反応」を用いた. 本研究では過去に行った気そらしについて尋ねるため, 末尾を過去形に変更した. 質問項目の多さによる回答者の負担を低減するために, 島津(2010)が行った因子分析において, 因子負荷量が.750未満の質問項目は除外し, 5項目で測定した. 「1:まったくあてはまらない」から「5:非常にあてはまる」の5件法で測定した.

 5.4. 出来事に関連した反すう


 Taku, Cann, Tedeschi, & Calhoun(2015)の「日本語版―出来事に関連した反すう尺度」の二因子を使用した. 尺度は「意図的熟考」, 「侵入的熟考」の2つの下位尺度からなっている. 回答者の負担を低減するために, 先行研究において因子負荷量の絶対値が大きい順にそれぞれ3項目選択し, 「意図的熟考」3項目, 「侵入的熟考」3項目の計6項目を用いた. 「0:全くなかった」〜「4:よくあった」の5件法で測定を行った. 後悔に対して気そらしを行った後の数週間の間と, 外傷後成長を遂げる数週間前から直前までの2時点について, 回想して質問に答えるように指示をした.

 5.5. 短縮版外傷後成長尺度


 Cann, Calhoun, Tedeschi, Taku, & Vishnevsky (2010)が作成した短縮版外傷後成長尺度(10項目)を使用した(邦訳は「日本語版-外傷後成長尺度(Taku, et al., 2007)」を参照した). 尺度は, 「他者との関係」, 「新たな可能性」, 「人間としての強さ」, 「精神性的(スピリチュアルな)変容」, 「人生に対する感謝」の5つの下位尺度からなっている. 「0:この変化を, 全く経験しなかった」, 「1:この変化を, ほんの少しだけ経験した」, 「2:この変化を, 少し経験した」, 「3:この変化を, まあまあ経験した」, 「4:この変化を, 強く経験した」, 「5:この変化を, かなり強く経験した」の6件法で測定した.

 5.6.後悔から受けた影響について


 後悔をした結果どのような変化が生じたかについて, “「後悔から得た気づき」や, 「後悔したことを, 自分の人生にどのように役立てられているか」などについて”, 文章で回答するように求めた. そして, 最も後悔した出来事に対する現在の後悔の強さを「0:全く後悔していない」〜「6:非常に後悔している」の7件法で回答させた.

 5.7.質問フォームAとBのリンク


 質問フォームAとBについて, 同じ回答者が回答したということが分かるように, 携帯電話・スマートフォン番号の下3桁と誕生日の日付の2桁を合わせた5桁の数字の入力を求めた.

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