6. 共分散構造分析による検討(質問フォームB)
6.1.「後悔直後の気そらし」から「外傷後成長前の熟考」への影響
行為後悔直後の気分転換的気そらし・回避的気そらしが外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考へ与える影響を当時の後悔の大きさで統制して検討するため, 当時の後悔の大きさと後悔直後の気分転換的気そらしと回避的気そらしを独立変数, 外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考を従属変数とした共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 13に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正し, 有意ではないパスを削除し再度適合度を検討したが(Figure 15), この段階で, 修正指数によって提案されたパスや相関は, 理論的に説明できるものではなく, 事後的なモデル変更となるため本研究では参照しなかった. 十分な適合度が得られなかったため, この仮説モデルは適切ではなかったと判断した.
6.2. 「後悔直後の熟考」から「外傷後成長前の熟考」への影響
行為後悔直後の意図的熟考・侵入的熟考から外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考へ与える影響を検討するために, 共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 15に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正した(Figure 16). その結果, 十分な適合度は得られなかったため, この仮説モデルは不適切であったと判断した.
6.3. 「後悔直後の熟考」から「外傷後成長」へ与える影響
行為後悔直後の意図的熟考・侵入的熟考から外傷後成長へ与える影響を, 後悔を感じ始めてからの経過期間で統制して検討するために, 後悔直後の意図的熟考・侵入的熟考と後悔を感じ始めてからの経過期間を独立変数, 外傷後成長を従属変数とした共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 17.に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正した. その結果, 十分な適合度が得られたため, このモデルを採用した. Figure 18.にこの修正モデルを示す. 「後悔直後の意図的熟考」から「外傷後成長」へ有意な正の影響が見られた(β=.803 p<.001). しかし, 「後悔直後の侵入的熟考」から「外傷後成長」への有意なパスは見られなかった.
6.4.「外傷後成長を遂げる直前の熟考」から「外傷後成長」への影響
行為後悔を感じてから数週間以上後, 外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考から外傷後成長へ与える影響を, 後悔を感じ始めてからの経過期間で統制して検討するために, 外傷後成長前の意図的熟考・侵入的熟考と, 後悔を感じ始めてからの経過期間を独立変数, 外傷後成長を従属変数とした共分散構造分析を行った. 仮説モデルをFigure 19に示す. この仮説モデルで適合度を検討したところ, 適合度に問題があったため, 修正指数に従ってモデルを修正した. その結果, 十分な適合度が得られたため, このモデルを採用した. Figure 20にこの修正モデルを示す. 「外傷後成長前の意図的熟考」から「外傷後成長」へ有意な正の影響が見られた(β=.838 p<.001). しかし, 「外傷後成長前の意図的熟考」と「後悔を感じ始めてからの経過期間」から「外傷後成長」への有意な影響は見られなかった.
6.5. 「気分転換的気そらし」の高低と「後悔直後の意図的熟考」の高低が「外傷後成長」に与える影響
「気分転換的気そらし」の高低と「後悔直後の意図的熟考」の高低が「外傷後成長」に与える影響を検討するために, 「外傷後成長」を従属変数として, 「気分転換的気そらし」(高・低群)×「後悔直後の意図的熟考」(高・低群)の重回帰分析を行った. その結果, 「気分転換的気そらし」×「後悔直後の意図的熟考」の交互作用は有意ではなかった(β=.019, n.s.). Figure 21にグラフを示す. しかし, 「気分転換的気そらし」の主効果に有意傾向が, 「後悔直後の意図的熟考」に有意な主効果(順に, β=.122, p<.10; β=.557, p<.01)が見られたため, 単純主効果の検定を行った. その結果, 「気分転換的気そらし」については, 高群・低群それぞれにおける「後悔直後の意図的熟考」の単純主効果が有意であり(β= .573 , p<.01 ; β=.541 , p<.01), 両群とも「後悔直後の意図的熟考」が高いほど, 「外傷後成長前の意図的熟考」が高かった. 「後悔直後の意図的熟考」高低群においては, 「気分転換的気そらし」の単純主効果は見られなかった.
6.6. 「後悔直後の意図的熟考」と「外傷後成長前の意図的熟考」が「後悔の低減」に与える影響
外傷後成長の促進に影響していた「後悔直後の意図的熟考」と「外傷後成長前の意図的熟考」が「後悔の低減」に与える影響について明らかにするために検討を行った. まず, 「当時の後悔の大きさ-現在の後悔の大きさ」を行うことで「後悔の低減得点」を算出した. 次に, 平均値を基準として「後悔直後の意図的熟考」高・低群, 「外傷後成長前の意図的熟考」高・低群に分け, それぞれ「後悔の低減得点」に有意差があるかどうか検討するために片側検定の対応のないt検定を行った. その結果, いずれも有意な結果は得られなかった(順に, t(128)= .763, n.s.; t(128)= 1.595, n.s. ). また, 「当時の後悔の大きさ」と「現在の後悔の大きさ」に有意差があるかどうか検討するために, 片側検定の対応のあるt検定を行ったところ有意な差が見られた(t(130)= 6.38, p<.001)(Figure 22).
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