考察


6. 非行為後悔において「気分転換的気そらし」, 「後悔直後の意図的熟考」, 「外傷後成長前の意図的熟考」が「後悔の低減」に与える影響


 非行為後悔において, 外傷後成長を遂げることに関係していた「気分転換的気そらし」, 「後悔直後の意図的熟考」, 「外傷後成長前の意図的熟考」が後悔の低減に与えている影響を検討するために, 気分転換的気そらし」高・低群, 「後悔直後の意図的熟考」高・低群, 「外傷後成長前の意図的熟考」高・低群で「後悔の低減得点」に有意差があるかどうか検討した. その結果, 「外傷後成長前の意図的熟考」の高・低群においては, 「後悔の低減得点」の平均値の差に有意傾向があった. また, 「当時の後悔の大きさ」と「現在の後悔の大きさ」の平均値の差についても検討したところ, 有意差が見られた. つまり, 回答者全体として非行為後悔の大きさは有意に低減しており, そして特に「外傷後成長前の意図的熟考」を行うほど後悔を低減させることが出来るということである. よって, 非行為後悔において, 仮説Dは一部支持された. 上市・通谷(2012)は, 最も後悔した出来事の内, その後の人生に活かせている後悔と活かせていない後悔について調査した. その結果, 活かせている後悔と活かせていない後悔のどちらであっても, 後悔について反省し, 合理化(よい経験になった)する程, 現在の後悔の大きさが小さくなることを明らかにした. 外傷後成長尺度の項目には, “自分の人生で, より良いことができるようになった”や, “自分の人生に, 新たな道筋を築いた”といった項目があり, これらは後悔が当人にとっての良い経験となったからこその成長感であると考えられる. つまり, 後悔をよい経験になったと捉えるようになる過程における意図的熟考や意味づけが後悔を低減させるということが推察される.


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