考察


5. 非行為後悔の意味づけ過程における「気分転換的気そらし」の高低と「後悔直後の意図的熟考」の高低が「外傷後成長前の意図的熟考」に与える影響


 1.と3.より, 「気分転換的気そらし」と「後悔直後の意図的熟考」が「外傷後成長前の意図的熟考」に正の影響を与えていることが明らかになった. しかし, 「外傷後成長前の意図的熟考」を促進するために, 「気分転換的気そらし」と「後悔直後の意図的熟考」のどちらかを行うとよいのか, それとも同時に行うとよいのか, 明らかにすることは出来なかった. よって, 「気分転換的気そらし」の高低と「後悔直後の意図的熟考」の高低が「外傷後成長前の意図的熟考」に与える影響を検討するために, 「外傷後成長前の意図的熟考」を従属変数として, 「気分転換的気そらし」(高・低群)×「後悔直後の意図的熟考」(高・低群)の重回帰分析を行った. その結果, 交互作用は有意ではなかったが, 「気分転換的気そらし」高低群それぞれにおける「後悔直後の意図的熟考」の主効果が有意であった. また「後悔直後の意図的熟考」高低群それぞれにおける「気分転換的気そらし」の主効果が有意であった. つまり, 特定の群において「気分転換的気そらし」や「後悔直後の意図的熟考」が有効なのではなく, どの群においても「気分転換的気そらし」を行うほど, そして「後悔直後の意図的熟考」を行うほど「外傷後成長前の意図的熟考」の頻度が高くなり, 「外傷後成長」を遂げることに繋がるということである. 外傷後成長を遂げるためには, 気分転換的気そらしばかりを行っている者は意図的熟考を行うほど, 意図的熟考ばかりを行っている者は気分転換的気そらしを行うほど, そしてどちらも行っていない者はどちらも行うほど有効であるということが明らかになった. これは仮説Aとは反する結果となるが, 非行為後悔における意味づけ過程について明らかにすることが出来た. Treynor, et al.(2003)によって, 問題の解決を目的とした意図的熟考によっては, 抑うつが上昇しないことが明らかにされている. 気分転換的気そらしは, 一時的な気分転換を意図して行う気そらしであり(島津, 2010), 項目にも“とりあえず”といった表現が用いられており短期間だけ用いられる反応スタイルである. つまり, 問題解決につなげるために一時的に行う反応スタイルである. 気分転換的気そらしを行いながら意図的熟考を行うことで, 問題解決を目的とした抑うつを上昇させない意図的熟考を行うことができたのであろう.


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