1.はじめに


 今日では「ゲーム」は,娯楽の一つとして人間の生活に根付いている.ゲームエイジ総研(2019a)が行った調査によると,2019年4月の段階でゲームアクティブユーザーは国内に3374万人存在し,前年度同月よりも247万人増加しており,ゲーム市場は拡大している.また全国の10〜40代男女を対象とした調査では,77%が日ごろからゲームをしており,年代別にみると,10代で90%,20代で85%と若い世代ほどゲームをしている人の割合が増えている(ゲームエイジ総研,2019b).つまり,今後社会を担う若い世代の大多数が「ゲーム」に触れて育ってきているため,ゲームが社会や人間の行動にどのような影響を及ぼしているか検討することには意義がある.
 
 そのようなゲームについて,最近は心理学の分野においても研究されている.その多くは,テレビゲームと攻撃性の関連(堀内ら,2016)といった,ゲームによって引き起こされる負の側面について検討を行う研究であったり,「ゲーミング」(南,2013)や「ゲーミフィケーション」(藤本,2015)といった,ゲームの要素を教育や社会活動に応用し活用しようとしたりするものである.このような研究では,人がゲームを行っている場面(以下,ゲーム場面)は日常生活を送る場面(以下,日常場面)とは異なる場面であることが,半ば前提条件のように述べられており,ゲームをすることがユーザーの意欲を高める(藤本,2015)ことや,ゲーム上での批判が許容されやすくなる(南,2013)ことが述べられている.しかし,本当にゲームは日常生活を送る場面とは異なる場面であるかを,実証的に明らかにした研究は見当たらない.

 そのため,本研究では,日常場面では一般的に否定的に評価されている「欺瞞行為」(水谷・柴,2005)が,ゲーム場面ではそれほど抵抗なく行われやすいとされている(井上,1977)ことに着目し,欺瞞行為に対する許容のされ方が,ゲーム場面と日常場面でどのように異なるのかを明らかにすることで,「ゲーム場面そのもの」の特性について検討する.



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