5.見栄欺瞞・謙遜欺瞞に関する考察
見栄欺瞞と謙遜欺瞞については,両方の共通点と有意差の出た欺瞞行為との相違点をもとに検討を行う.「見栄欺瞞」は自分をよく見せようとする欺瞞行為であり,「謙遜欺瞞」は自分をへりくだって見せようとする欺瞞行為である.そのことから,それらの欺瞞行為は自分の見せ方に焦点が当てられており,相手に対して害を加える欺瞞行為ではないことが考えられる.一方で,有意差が見られた危害欺瞞や潤滑欺瞞は考察で述べたように,日常場面もしくはゲーム場面,あるいは両方の場面において,相手に害を加える欺瞞行為である.この違いが,見栄欺瞞・謙遜欺瞞において,有意差が出なかった原因ではないだろうか.つまり,見栄欺瞞や謙遜欺瞞は相手に害を加えるような欺瞞行為ではないため,日常場面においても大きく否定されるべきものではなく,それなりに許容されていることが考えられる.そのような欺瞞行為であるため,ゲーム場面になったとしても,日常場面と同様の評価のされ方をすることにより,有意差が出なかったことが考えられる.このことから,ゲーム場面というものは,日常場面において許容されにくい行為が許容されやすくなる場面であり,日常場面でもともと許容されやすい行為については影響を及ぼさない場面であることが考えらえる.
←back