1.はじめに
近年,核家族の増加や少子化,地域の人々との関係の希薄化が社会問題として取り上げられている。総務省の国勢調査(2005)によると,核家族世帯は世帯類型別構成割合でみると,57.9%であり半数を占めている。子どもの成長が感じられたときや子どもの笑顔が見られたときなどに喜びを感じるなど,子育てに満足している親は半数を越えている。しかし一方で,核家族化の進行や地域の人々との関係の希薄化などを背景に,子どもをどのように育てていったらよいか分からず,孤立していると感じたり,情緒が不安定になったりする親も増加している(文部科学省,2004)。また,女性の社会進出が一般的になり,共働き世帯も増加している。こうした中,親が子どもと一緒に食事を取る時間などの子どもと過ごす時間が十分ではなくなることも指摘されている。しかし,子どもの発達にとって養育の「質」が重要であり,その質の高低が子どもの愛着安定性に影響しているという報告もある(篠原,2008)。親とただ共に過ごすことではなく,親の養育の質が求められ,その中で親と子どもの信頼関係を築いていくことが重要であると考えられる。こうした親と子どもの関係によって子どもが発達していき,子どもの認知や情緒的発達,仲間関係などに影響を与えている。例えば,子どもが親との間に信頼関係が形成できていると認知することが,子どもの望ましい仲間関係の形成に大きく影響している。親和性の高い親子関係を持つ子どもの方が,他者に対しても良好な関係を築きやすいことが明らかにされている(姜・大重,2007)。また,親と子どもの関係は幼少期だけでなく青年期にも影響を及ぼしており,親子関係が土台となっていくのである。子どもの頃の親の養育態度と青年期の自尊感情との関連を調査した研究においては,子どもの頃の親の養育態度が関連していることが示された(山下・石・桂田,2010)。この研究ではさらに,愛情や共感だけでなく過保護にならず自立を促進する養育態度が高い自尊感情を育てることが明らかにされた。これらのように,親と子どもの関係は青年期においても重要な役割を果たしており,親と子どもの関係において愛着関係が築けることが重要であると考えられる。よって,本研究では親への愛着が青年期の対人行動に与える影響について検討していく。また,媒介する変数として共感性を含め検討していく。
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